セバスチャン・エックス「僕らのファンタジー」EP(Boundee)

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sebastianx.jpg まるで、太陽を飲み込んだような歌声だ。春夏秋冬、冬の寒さと春の暖かさを通りすぎて、真夏の太陽を待ち焦がれるような、とにかく、この歌声はサンサンと輝いている。そう、これは待ち焦がれた太陽だ。と、言いながら前作までこのバンドの音源を聴いても、僕にはまぶしすぎたようで、Sebastian Xだなんて、スパルタンXみたいだなと思ってたぐらいで、そのサンサンと輝く、ド級に力強い歌声に拒否反応を示していたのも事実。例えるなら、ジョジョの奇妙な冒険の第三部は「絵が気持ち悪くて...」と言って損をしていた読者みたいな話。わかりにくいかな。まあ、つまり、マイナス印象からの、にわかリスナーなんです。とは言ってもこのバンドの結成はおよそ2年、今作が2枚目のミニアルバムなわけで、そもそもが間もないわけだけど、いったいこれからどうなっちゃうのよ、というような期待の若手(新世代バンドと言うべきか)なのである。
 
 このバンドの成り立ちは2年前より少しさかのぼって、前身バンドでのハードコアな曲長からはじまったようで、なるほど、そう言われるとヴォーカルである、永原真夏の歌声はハードコアになじむ! 実になじむぞ! と、ついつい、わかる人にしかわからないジョジョネタを前段落にひっぱられ文章に織り交ぜてみたりしたが、伝わるかな?でも、しょうがないんです、このアルバムを聴いていると楽しくて仕方ないのだから。僕だって少しは遊びたくなるってもんだ。
  
 さて、そんな曲の大半は、楽器の弾けない永原真夏がアカペラ等を駆使して持ち込み、ドラム、ベース、キーボードのギターレスのメンバーで具現化されているらしく、時折、調子っぱずれに歌われる歌声も、実はそんな独特な工程からきているのかもしれない。それは一聴すると、歌声と楽器隊がまるでケンカしているようにも思える曲群なのだが、よくよく聴くと実は仲良くじゃれあっているだけで、今作のリード・トラック「世界の果てまで連れてって!」ではホーン隊までも加わり、よりいっそう楽しげである。実は、それが、稚拙な僕の耳に、このバンドの魅力を気づかせるきっかけになったわけで、その音数を増やす方向性とは個人的に大歓迎である。もっともっと、彼女の歌声を音の渦に投げ込んで、じゃれあって、楽しんでほしい。勝手な妄想ですが、上原ひろみのピアノとじゃれあったら最高だなと思ったりもする。

 今作に話を戻すと、ここではのっけから「フェスティバル」と歌い、前述したリード・トラック「世界の果てまで連れてって!」が続き、その後もアップテンポな曲が続くのだが、後半につれ歌声もグッと引き締まり、ハキハキと歌われる歌詞がストレートに響いてきて、あれれ、いつに間にかほろりときたりする。なんだか、楽しいと言ったり、ほろりときたり。兎にも角にも、この一枚を通して喜怒哀楽動かされまくりなのである。ただあっけらかんと太陽のように明るいだけではなく、心に強く響くアルバムなのである。仮に、僕のようにマイナスにふり幅を向けたリスナーがいたのならば、あらためて手にとって聴いてみてほしいし、前作からのファンの皆さんとは、僭越ながら手に手をとり高らかと笑いあいたい気分である。

(佐藤奨作)

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