パトリック・パルシンガー『インパッシヴ・スカイズ』(Disko B / Musicmine)

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patrick_pulsinger.jpg パトリック・パルシンガーが新しいアルバムを出すと知って、前作『Easy To Assemble.Hard To Take Apart』のようなアルバムでなければ良いなあと思っていたのだが、それは杞憂に終わった。もちろん内容を悪いと思っているわけでは決してなく、傑作とさえ思っているのだが、彼のそれまでの輝かしいキャリアを振り返ると、やはり数々のシングルで見せたテクノ、アシッド・ハウスや、スラッツン・ストリングス&909(Sluts'n'Strings & 909)名義で出した名作『Carrera』の様なサウンドを個人的には望んでいたのだ。

 一聴してダンサブルでありつつも整理されてない感じがFour Tetの『There Is Love in You』に似てるようにも思えたが、Four Tetの音楽が雑踏のような温度があるのに対して、パルシンガーのそれは地下室のようなひんやりとした質感がある。アルバム中「A To Z」は歌メロがクラフトワークの「The Robots」を思わせるし、「ライズ・アンド・フォール」の2:16のディレイの使い方、「グレイ・ガーデンズ」の盛り上げ方など、古典的な手法が多いと思うのだが、この雑然としつつもひんやりとした質感こそが彼の個性だと思う。

 アルバム中、6組のアーティストがフィーチャーされているが、正直言ってフェネス以外はほとんど知らなかったので調べてみた。残念ながら音源を含んだ詳細がわからなかったアーティストもいるので一部になるが参考まで。

 「グレイ・ガーデンズ」でフィーチュアされている、フランツ・ホウツィンガー(Franz Hautzinger)はデレク・ベイリーや AMMの面々とも共演しているトランぺッター。音源をyoutubeで探してみたのだが、これを聴くとエレクトリック期のマイルス的。プロフィールを読んでもっとインプロしてるかなと思っていたのだけど。

 「ライズ・アンド・フォール」のジー・リッツォ(G Rizo)はエレクトロ系の女性ボーカリスト。本人のMySpaceにYouTubeのライヴ映像がリンクされている。かなりパワフル。

 エレクトロ・グッツィ(Elektro Guzzi)はオーストリアの3ピース・インスト・バンド。ステファン・ゴールドマンのMACROからアルバムが出ている。ギター、ドラム、ベース、という構成ながら、サウンドはテクノ。そのアルバムにもパルシンガーは関わっているようだ。これもmyspaceがある。

 このアルバムを入手してからもう何度も繰り返し聴いている。このクオリティのリスニングにも耐え得るダンス・ミュージックというのもありそうでなかなかないものだ。コンスタントな活動を期待したい。

(田中智紀)

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