COMPUTER MAGIC「Hiding From Our Time」EP(Self-Release)

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computer_magic.jpg かなり唐突だけど、オタクって自分の趣味にちょっとでも理解を示してくれる女の子と知り合うとすぐ恋心を抱いてしまいますよね。あの心理ってなんだろう。自分のことをわかってくれそうだから? 会話が弾みそうだから? アイアン・メイデンのライブに付き合ってくれそうだから? でもオレたち、冴えないんだぜ? それってほとんどバズコックスの「Ever Fallen In Love」の世界じゃん! 相手が誰でも"You Shouldn't've Fallen In Love With"だよ! バズコックスってボンクラの味方だよね。

 冴えないくせにオタクって贅沢で、ただ相手がオタク気質をもってるだけでは満足できず、ルックスについても高いハードルを設定したりする。その一方で、自分より明らかに濃ゆい異性を見つけると、スンナリひれ伏たりもする。素直になれなくて。「かわいいは、正義」とはよく言ったものだけど、かわいいガチヲタって本当に神々しい。僕もそういうコは好きだ。見つけるたびに興奮して、間違って話しかけられると挙動不審になる。公の場でそんなふうになっては困るし、競争率が高くても戦える気がしないので、ネットを駆使して自分のアイドルは自分で探すに限る。

 そんなわけで見つけたのが、ブルックリンで活動する(またかよ)とびきりのオタ女子Danielle Johnson。愛称・ダンジーちゃんによる一人ユニットがこのComputer Magicである。まずはルックス。彼女のfacebookを見てみよう。整った顔立ち、可憐な金髪、野暮ったい服装。何点つける? 僕は120点くらい。こういうちょっと野暮いのが好きなんですよ...。MySpaceのアルバムも最高。なんか如何にもって感じですよね。こういう人がいっぱいいたのが90年代ってイメージ。憧れるわ。僕もこの世界観の住人になりたい。いっしょに変なポーズとりたい。
 
 アメリカのナードなリスナーのあいだでは、好きな曲をミックスにして自分のブログに載せるのが何年も前から流行っていて(日本だとそういうのにウルサイ人多いよね)、ダンジーちゃんもご多分に漏れず作ってます。スター・トレックに始まり、ザ・クリーン、ELO、クランプス、ブライアン・ジョンストン・マサカー...。グダグダだったり暑苦しかったりひときわポップだったり。これって完全ボンクラ趣味じゃないッスか...。媚びようと思ってもなかなかココまで出来んぞ?

 そんな彼女が作り出す音楽は、自身が愛する『バーバレラ』や『2300年未来への旅』『アルファヴィル』といったレトロ・フューチャーなSF映画や、古き良き任天堂ファミリーコンピュータへの憧憬がモンド・ミュージックを思わせるシンセの音色にたっぷり詰まった(ブライアン・ウィルソンが標榜したのとはちょっと違う)ティーンエイジ・シンフォニー。Computer Magicとしては今年に入って活動開始したばかりということで技術的にはメチャクチャ拙いが、そういう拙さがいつだってポップを魅力ある姿に変えてきたはずだ。そして、意識的なのか無意識的なのか、音のほうはチルウェイヴとも密接にリンクしていて、気だるい空気と密室的ぎこちなさはウォッシュト・アウトやデザイアといったあのシーンの代表格にも通じるものがある。インターネットとテレビゲームが中心の世界で笑ったり呻いたり愛を叫んでいたりするような音楽。

 何より、散々書いてきたボンクラ的世界観が音に如実に顕われているのがイイ。「Teenage Ballad (High School)」というそのものズバリなタイトルの曲では"I'm Just wanna be free"とサビで連呼しているが、そこまであっけらかんとしたフレーズをこんなゆるフワな音で歌われたら...! ベスト・コーストのド直球っぷりにも驚いたけど、自堕落であること、自分らしくあることにここまで寛容な音楽には久しぶりに出会った気がする。個人的には、元フェルトのローレンスがデニムの次に結成したゴーカート・モーツァルトでのピュアすぎる楽曲を聴いて以来...かな(ちなみに現在、ローレンスはクスリの摂りすぎで相当具合が悪いそうだ。心配...)。

 適当にクリックしていると、すぐこういうお下品でスカムなtumblrに飛んだりして彼女のホームページは厄介なのだが(間近の記事だと、このスリッパはちょっと欲しい)、このEPもそちらでフリーDL可能。キッズが完全武装しているこのジャケ写は誰かの他の作品でも使われてたような。気のせいでしょうか...。いずれにせよ、ダンジーちゃんはこのまま朗らかでいてほしいものだ。スーファミのF-ZEROを朝までいっしょにプレイしたい。妄想しながらパソコンの前にずーっといたら目が乾いて痛くなってきたので、そろそろ寝ますね。

(小熊俊哉)

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