BEST COAST『Crazy For You』(Mexican Summer / Wichita)

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best_coast.jpg 『あなたに夢中』―これほど臆面もなくストレートなタイトルは久しぶりに見た気がする。数々のEPやシングルを発表し2009年より注目を集めてきたLAのベスト・コーストのデビュー・アルバムはそのタイトルに違わず、飾らない言葉とストレートで甘いメロディが詰まった作品だった。

 シンガー/ソングライターのベサニー・コセンティノとマルチ・インストゥルメンタリストのボブ・ブルーノによるデュオの特徴は、ジャングリーなギターとスウィートなメロディにある...なんていうと、ヴィヴィアン・ガールズやダム・ダム・ガールズといった最近のガールズ・バンドが頭に浮かぶかもしれない。だが、ベスト・コーストの魅力はシンプルさにある。

 まず、リリックは驚くほど単純明快。基本的には、「あなたと私がいて幸せ」、という笑ってしまうほどピュアなテーマを、中学生英語並みにシンプルな言葉で綴っている。だが、スペクター風のもやがかかったようなプロダクションと、ドゥー・ワップのポップなコーラス、そして初期パンクを思わせる直線的なメロディの組み合わせが簡素な愛の言葉にロマンを与えた。電話を待つ甘酸っぱく切ない気持ちを込めた「Boyfriend」や、ギター・ノイズとロールするドラムで胸の高鳴りを表現した「Crazy For You」にはきっと10代の青春を思い出すだろうし、一緒にいられる幸せを歌った「Happy」でのラモーンズ風の疾走では力強いビートが心臓の鼓動とリンクするようだ。「60年代のポップを多く聴いてきた」というベサニーのペンによる楽曲は多くの人に共感を呼び起こす。

 海や夏といったフレーズがキーワードとなり、リアル・エステイトにサーファー・ブラッドといったサーフ・ロックや、ウォッシュト・アウト、ワイルド・ナッシングといったチルウェイヴ系アーティストが活躍する現在のUS。このシーンにおいて、ザ・ドラムスと並んで大衆にアピールする存在といえる。今回もアンセム化必至のコンバースのキャンペーン・ソング「All Summer」でも、キッド・カディとヴァンパイア・ウィークエンドのロスタムというユニークな2人に囲まれながらメインをとっているし、今年の夏女はベサニーで決まりだろう。

 それにしても、スウィートな楽曲とアルバム・タイトルは彼氏であるウェイヴスのネイサンに向けたものなのか、それとも溺愛する猫に向けたものなのか、そこが個人的には気になってしょうがない。

(角田仁志)

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