ウルフ・パレード『エクスポ 86』(Sub Pop / Traffic)

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wolf_parade.jpg この音の堂々ぶりたるや頼もしい。それにも増してふてぶてしい。とはいえ、彼らの持ち味のひとつである力の抜けたところもあり、メロディのセンスも良く傑作だ。
 
 アーケイド・ファイアやモデスト・マウスから絶賛されているカナダはモントリオールのウルフ・パレード。彼らの2年振り、3作目となる『Expo 86』。それはかなりの力強さを持ったサウンドがまさに堂々と溢れてくる。前作では様々な音楽要素を駆使し、起用に扱っていたところがややあったが、本作ではどんな音楽要素も飲み込み、はちきれんばかりの迫力がある。まるで音でぱんぱんに詰まった箱から様々な音が堪え切れないとばかりに飛び出てくる。それは時にアクセントになり、時にアクロバティックに宙を舞う。へヴィなギター・サウンドもカッコよく、煌めく電子音も楽曲の表情を豊かにしている。変拍子も良い。怒りのパワーをポップに昇華しているところも巧いのだ。そこにひねくれた歌声が乗っているから楽しい。
 
 特に「Pobody's Nerfect」での切り込んでくるギターと良い意味でぬけた歌声のアンバランスな感覚がユーモアたっぷりでいて痛快。そして豪快。ギター・ソロも決してナルシスト気味になっていないから気持ちがいい。コーラス(かけ声?)もまた痛快なのだ。そしてアルバム冒頭曲からして、今、バンドが良い状態であることが分かる。「行くぞ!」という声が聞こえてきそうなほど突っ走る。全曲通してひたすらに走り続けている本作は、バンドのエネルギーをそのまま何かに変換せずに押しだしている。だからいいのだ。聴くと昂ぶるのだ。一皮むけたという感じなのである。
 
 いわば素をそのまま出している。熱く、濃く、しかしユーモアを忘れずに。出す音の一切に迷いがない。全ての音が一体となったときのカタルシスは凄まじいものがあり、素を出すことに躊躇がなくなったことはアーティストとしての、表現者としての成長だと僕は思う。本作はウルフ・パレードにとってひとつの転機になるのではないだろうか。全てを出しつくした上で、この先どう出るのか。いや、先を考えるのは野暮かもしれない。彼らは今に全力を注いでいる。その姿は美しさすら感じさせる。

(田中喬史)

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