WILD NOTHING『Gemini』(Captured Tracks) [reviews]

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 例えば、『(500)日のサマー』で、主人公が聴いていた「There Is A Light」。また、ザ・ペインズ・オブ・ビーイング・ピュア・アット・ハートやザ・ドラムスといったバンドの音楽性。そう、現在のUSにはザ・スミスの影があちこちに見られる。英国的なセンスが強く、活動していた時代には見向きもされなかったものの、今のUSインディのキーワードとして、ザ・スミスは大きなものになっている。

 さて、今回紹介するワイルド・ナッシングも明らかにスミスの系譜を受け継いだアクトだ。ジャック・テイタムという青年のソロ・プロジェクトなのだが、この青年、エイブ・ヴィゴダのサポートでギターを弾き、トロピカル・パンク・バンドのフェイスペイント(Facepaint)やジャック&ザ・ホエール名義でシンガー・ソングライターとしても活動する、という多彩な活動をしている青年だ。いや、それだけの活動ぶりと音楽ギークなところがなければこのデビュー・アルバム『Gemini』は生まれていないだろう。

 スミスを思わせるキャッチーなメロディに、マイブラ譲りのホワイト・ノイズ。それはまるで美しき白昼夢。ウォッシュト・アウトやリアル・エステイトなどUSインディ界を巻き込んだ夏ムードもGlo-Fi/Chillwaveのテイストも含みつつ、キラキラとした電子音とファルセットのヴォーカルとコーラス、そして軽快なギターのカッティングのサウンドがただただ耳の奥で光っては消えていく。淡い水彩画のような優しいタッチで、80年代のインディのエッセンスを凝縮し昇華させた良作だ。

 ケイト・ブッシュの「Cloudbusting」をカヴァーしたり、PVでは60年代の映画を引用したりと、通のツボをつくセンスも含め、このジャック君はモリッシーの遺伝子を受け継いでいるといえるだろう。僕には彼が、インディ界のオタク中のオタク、ブラッドフォード・コックスの「次」じゃないかと感じられてしょうがない。

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