スクール・オブ・セヴン・ベルズ『ディスコネクト・フロム・ディザイア』(Vagrant / Plancha)

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SVIIB.jpg 2008年10月にリリースされたファースト・アルバム『Alpinisms』に衝撃を受けて以来、翌年明け深夜に代官山UNITで行なわれた初来日公演、サマー・ソニック2009での初日ソニック・ステージ1発目、そして、昨年暮れに英国マインヘッドで行なわれたAll Tomorrow's Partiesのスピンアウト的フェスNightmare Before Christmasの最終日ヘッドライナー(キュレーターであり、メイン・アクトでもあるマイ・ブラッディ・ヴァレンタインより後に登場!)と、ここ1年あまりの彼らの活躍を要所要所で目撃してきた筆者としては、個人的にも非常に思い入れの深いバンドである。元シークレット・マシーンズのベンジャミン・カーティスと、元オン! エアー! ライブラリーのアレハンドラ & クラウディアの双子姉妹による3人組ユニット、スクール・オブ・セヴン・ベルズ。セカンド・アルバムとなる本作は、そんな彼らのここまでの成長の跡がしっかりと刻まれた力作である。
 
  タイトルは、ブライアン・イーノが画家のピーター・シュミットと考案したカード・ゲームの一種「オブリーク・ストラテジーズ」に記された一節を借用したもの。「願望(情熱)から切り離せ」とは一瞬ネガティヴな印象を受けるフレーズだが、作業が煮詰まるたびにこの言葉を思い出しながら本作のレコーディングを行なっていたというベンジャミンにとっては、むしろポジティヴな意味合いとして捉えていたようだ。この、少々仏教的な響きが彼らのオリエンタルな要素に何かしらの影響を与えた...と考えるのはいささか深読みが過ぎるとしても、聴き手に圧倒的な多幸感を与えつつも、決して熱くならないクールな佇まいや楽曲の数々は、まさしく『ディスコネクト・フロム・デザイア』という言葉に象徴されていると言えよう。
 
 ポップかつ幻想的な(彼らの歌詞の大部分は、アレハンドラの見た夢を書き記したものが基になっているという)メロディとハーモニー、シンセサイザーとディストーション・ギターの融合、リズムマシンによるタイトかつトライバルなグルーヴ。そうした彼らの軸となるサウンド・プロダクションは、これまでの延長線上にあるものだが、本作は格段に「開いている」印象を受ける。どちらかと言えば閉じた箱庭的な印象の強かったファーストと比較すると、今作は1つ1つの音を、確信を持って鳴らしているように感じられるのだ。

 例えば、シンプルなリフやメロの反復がキャッチーで心地良い「Windstorm」(先行シングル)、疾走感あふれるエレクトリック・ビートと双子姉妹の美しくも妖しいハーモニーが絡み合う「Heart Is Strange」や「Dust Devil」、コクトー・ツインズ直系の耽美サウンドが胸にしみる「I L U」や「Dial」など、どの曲もライヴとフェスで鍛えた演奏力や表現力が力強い武器となっている。前作の「Half Asleep」のような、聴いた瞬間に心を鷲掴みにされて何処かへ連れ去られてしまうほどの、圧倒的な力を持つ楽曲は少ないかも知れないが、アルバム全体で聴いたときの「開放感」や「高揚感」は間違いなく本作に軍配が上がる。そういう意味でこの2つのアルバムは、MGMTのファーストとセカンドの関係にも似ているのではないだろうか(どちらのバンドも、セカンドの方が繰り返し聴き込む回数が増えそうだ)。
 
 一般的に、「ロック~ポピュラー・ミュージックのアルバムは、セカンドが勝負」と言われる。デビューまでに用意してきた様々なアイディアを一度に披露出来るファーストに比べると、ゼロから作り始めなければならないセカンドは、そのアーティストが持つ本質を露にするからだ。「ディスコネクト・フロム・デザイア」というキーワードを頼りに、本来の自分たちを見失わず渾身のアルバムを作り上げたスクール・オブ・セヴン・ベルズ。彼らは、その「勝負」で見事勝利を手にしたようだ。
 
 なお、日本盤にはボーナス・トラックを2曲収録。初回限定盤は、歌詞付タロットカード11枚が封入された、スペシャル・ボックス仕様になっているので要注目である。

(黒田隆憲)

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