Shall we talk more about "Radiohead Syndrome"? Vol.4

コントリビューター松浦達さんによる問題提起原稿「レディオヘッド・シンドロームはどこまでつづくのか?」、それを受けて口火を切ってくださった「みの」さんによる原稿八木皓平さんによる「『Kid A』の呪い」、そして近藤真弥さんによる「スケープゴート」につづいて、コントリビューター田中喬史さんから、さらなる考察が届きました。

タイトルは、価値観相対化のすすめ

近藤さんの「スケープゴート」から、視点の転換をさらに推しすすめたものと言えるかもしれません。ちなみに喬史さん、コントリビューターではありますが、ほかの方同様FEED BACKのフォームからお便りをくださいました。みなさんも、よろしければ是非!

さて、「価値観相対化のすすめ」とは?

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 後出しジャンケンでたいへん申し訳ないのだけど、みなさんの主張を読んでいると、批評として健全な姿に思える。

 レディオヘッドが終わったのか否かという観点で僕はレディオヘッドを、特に『Kid A』を夢中になって聴いていたわけではなかったし、ロッキング・オンも読んでいないので『Kid A』が聴き手に呪いをかけたか、それともかけられたのか、という言いに関しては、正直、頭上に「?」が点じる。でも、そういう意見が出てくる『Kid A』という作品は、音楽評論の原点をあぶり出す作品なのだなと僕は思った。というのも、これから書くことは周知の事実かもしれないし、ちょっとした音楽文献を開けば出てくることでもあるけれど、レコードが誕生する以前は、コンサート・ホールでしか音楽を聴けなかったわけで、音楽を聴く際、演奏者の意図を汲み取らなければならないという脅迫概念に似た価値観があった。だが、レコードが誕生し、音楽を個人で自由に楽しめるようになった結果、「作者の意図を汲み取らなければならない」という価値観は崩れた。そうして音楽を自由に解釈し、論じてもいい、という価値観が生まれ、つまりそれが音楽評論の原点だった。その意味では作者の意図が汲み取りにくい『Kid A』という作品は、より論じ方の幅が広くある作品だと思うし、おかしなことを言えば、論じがいのある作品だと思う。実際、ミクシィやこのコーナーでも様々な観点から論じられているわけであるし、それが先に記したような批評としての健全な姿だと僕は思う。

 ただ、反面、アーティスト・サイドにとっては、皮肉なことだなという思いもある。『Kid A』はトム・ヨーク本人が、自分の音楽をリスナーが大げさに捉えないようにと、回避するために作られた作品だったのだから。確か、トム・ヨークがリスナーのリアクションに対して「そんなに大げさな作品かな? それってみんなの願望でしかないような気がするんだけど」という発言をしていた覚えがある。また「僕らの音楽を音以外の側面で捉えるのはナンセンスだ」とも。でも僕は、音楽はアーティストの手を離れた瞬間、自由になると考えている者なので、音以外の側面で捉えるのはナンセンスなことだとは思っていない。僕は単に、というか純粋に、レディオヘッドの作品を良い音楽だなと捉えているだけの話であって。ちなみに『Kid A』の初回プレスは100万枚にするぞとレコード会社から言われていたらしい。つまり売れるレコードを作れ、と。『Kid A』はそれに対するアンチでもあった。レディオヘッドがオウテカやエイフェックス・ツインに惹かれたのは、音楽性に関してはもちろんのこと、自由に創作できる環境への願望のまなざしでもあったんじゃないかと思う。少し前に、トム・ヨークが若手バンドに対して「メジャー・レーベルとは契約するな」という忠告をした、というニュースが流れたけれど、それは端的に『Kid A』の姿勢を表しているんじゃないか。

 また、松浦氏の、≪エレクトロニカとの共振など含め、良くも悪くも頑迷なロック・リスナーの「耳」を拡張してきた功績ももっと称えられるべきだろうし≫という言いはとても共感できる。90年代後半にオウテカやボーズ・オブ・カナダが傑作を発表し、エレクトロニカ・ファン以外の音楽ファンに「エレクトロニカって何?」という興味、好奇心を含む空気が当時はあった。その好奇心を満たす格好のレコードが『Kid A』だった。ただ、松浦氏が言うところの『「耳」を拡張』に関しては、特定のアーティストに託す、あるいは頼るのではなく、リスナーが自発的に様々な音楽を聴いて、行なう方が、駄作も傑作も通過することになるわけで、より拡張されるのではないかと思う。駄作はともかく、クッキーシーンがリスナーの耳の拡張に少しでも役立てればと、僕は思っている。

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