モーニング・ベンダーズ『ビッグ・エコー』(Rough Trade / Hostess)

morningbenders.jpg 信じ込むこと、これは怖い。カリフォルニア出身の4ピース・バンド、モーニング・ベンダーズの本作を初めて聴いた時は、アニマル・コレクティヴっぽいな(あくまで「ぽい」だが)、という印象が強かったのだが、聴いていくうちに、ちょっと待てよ、と、なったのだった。彼らの根底にあるものは、メロディ・メイカーとしての素質であり、凝ったサウンド・エフェクトも、ヴォイス・パフォーマンス的な歌声も、軸ではない。サウンドの表面の見せかけに、騙されちゃあイケナイんだ。
 
 軽快なステップを踏んでいるメロディ・ラインを盛り上げるところではきっちり上げる。エレクトリック・ギターのリフだって格好いいじゃないか。室内楽的なストリングスを淡くすることの幻想の粋が効いている。いや、それだけではなく、サウンド全体を淡くし、それと対比するかたちでメロディの良さを際立たせている。不協和音も聴こえるが、それすらも霧のようにうっすらと忍ばせアクセントになっているから面白い。メロディ以外は全て曖昧に加工されていて、それはやわらかく、聴いていると生まれたばかりの暖かい空気をかき分けて歩を進めている心地が浮かんでくる。
 
 アルバム後半ではスリントやモグワイを思わせる音楽性を、やはりやさしく、やわらかく押し出し、安堵という興奮が静かに浮かび、暖かい轟音の中で眠れそうなほどの音のなかでいつしか我を忘れてしまう瞬間すらある。様々な音楽要素が見受けられるが、全面に押し出している曲は少ない。ブロークン・ベルズやグリズリー・ベアの前座を務めた彼ら。ジョイ・ディヴィジョンのカヴァーもやったのだから、きっと彼らには本作に収められていない領域があるはずだ。その領域とんでもないものだと、予想は付くが、あくまでも彼らは小出しに、これ見よがしに出すことはないであろうなと感じられ、音楽とともにその姿勢に潔さを感じるのだ。音楽シーンの中で際立った存在ではない。しかし、きらりと光るセンスに吸い寄せられる。

(田中喬史)

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