ザ・レンタルズ

THE RENTALS

実際去年、僕らはアルバムを4枚作ったようなものだったから(笑)

みんな大好き! 元祖泣き顔男、マット・シャープ率いるレンタルズのトリビュート・アルバム『Lost Out In The Machinery - The Songs Of The Rentals -』が発表された。インタビュー中にも登場するヤー・ヤー・ヤー・ヤーズ、アッシュ、ティーガン・アンド・サラ、日本から唯一参加のアジアン・カンフー・ジェネレーションに加え、モーション・シティ・サウンドトラックやコープランド、オズマやトーキョー・ポリス・クラブといった多彩な面子が参加し、それぞれの解釈を加えたレンタルズ・ナンバーを披露してくれている。日本では06年のNANO-MUGEN FES.への参加以降、彼らの活動について耳にする機会があまりなかったが、昨年は『Songs About Time』という一大プロジェクトのために忙殺さていたのだという。では、マット・シャープに、そのプロジェクトやトリビュート、バンドの今後についても聞いてみよう。

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こんにちは、クッキーシーンです。お元気ですか?

マット・シャープ(以下、M):うん、元気だよ。クッキーシーンのことはよく知ってるよ(笑)。

ありがとうございます! 編集長はあなたの大ファンで、モーション・シティ・サウンドトラックにインタヴューしたときに、彼らがあなたのトリビュート・アルバムのための曲をやったって話をしていたんで(編注:そのインタヴューは近日アップ予定です。遅くなってしまって、本当に申し訳ありません...:汗)リリースを楽しみにしてたんですよ!

M:そうなんだ! すごくうれしいね。

まずは近況から聞かせてください。去年は『Songs About Time』というプロジェクトをされていたようですが、最近はいかがお過ごしですか?

M:うん、快適に過ごしてはいるよ。なんだか変な感じでもあるけどね(笑)。去年は...すごく忙しかったんだ。ものすごくたくさんやることがあって、毎日毎日、スケジュールが詰まっててさ。やらなきゃいけないことっていうのが、選択の余地なく毎分ごとにあったような(笑)。だからそういう時期を過ごしたあと...なんだか今は変な感じなんだよ。実際去年は、僕のこれまでのキャリアの中でも、クリエイティヴな面から考えたら一番エキサイティングな年だった。だから今は、「さて、これからどうしようか?」って感じでいるんだけど。

『Songs About Time』は日本でのリリースがなかったため、詳細が伝わっていません。改めて、どんなプロジェクトだったのか教えてください。

M:2006年に、レンタルズは再び活動を開始してライヴを始めた。活発にツアーをしていろんなところを周ったし、横浜に...NANO-MUGEN FES.でも行ったね。その翌年も2、3カ月のツアーに出て、そんな中で自分たちとしては一生懸命やってはいたんだけど、ホーム・レコーディングの4曲入りのレコード(「The Last Little Life」EP)しか出せないでいて、自分たちのやる気と状況が空回りしてるように感じた。「何だよ、もう復活して何年もプレイしてるのに、新曲を4曲しか出せてないのか?」って。それでそういう状況にならないように、丸1年間...1月1日から12月31日まで...毎日、毎週、毎月、何かやるような、マルチなアート・プロジェクトをやろうって決めたんだよ。

なるほど。

M:そこには写真や映像なんかも含まれててさ。毎日僕はフジ・フィルム1本分の写真を撮った。つまりは1日40枚ぐらいの写真を撮ってたってことかな。それで1日の終わりにフィルムに日付を記して、それを冷蔵庫にしまった。現像しないでね。それから僕らは毎週、オフィシャルのホームページ(http://www.therentals.com/)にショート・フィルムをアップして、そのフィルムに音楽を付けた。同時に3カ月ごとにアルバムを出して、合計4枚出したんだよ。ショート・フィルムの映像と、サウンドトラック、それに同時進行でレコーディングしていた実際のアルバムの3つがお互いに影響を与えあう、大きなプロジェクトになったんだ。それまで何年も4曲しかリリースしてなかったのに、曲は4枚のアルバムで42曲リリースしたし、42個の映像用の音楽、それに52本のショート・フィルム、それに365本のフィルムを作り上げることができた。それでそれを全部ひとつにまとめた、DVDやCDや写真のセットを、365セット売り出したんだよ。中には現像前のフィルムが1本入っていて、それを現像するのは購入者に任される。それでコミュニティを作って、購入者の365人が現像した写真をシェアしたり、話し合ったりするような場を設けたりしたんだ。それがやっと終わったのが2週間前なんだけどね。本当にいろんなことが混ざり合った、大がかりなアート・プロジェクトだったよ。

そんな忙しい中から、トリビュート盤が制作されることになった経緯を教えてください。

M:それはただ、僕らが最初に再結成してショウをプレイし始めたころに、偶然他のグループが...例えばヤー・ヤー・ヤーズとか、いくつかのバンドが僕らの曲をカヴァーしてレコーディングしたり、ライヴでプレイしたりするようになってたことから始まったんだ。僕らの友達がそういうのを見て、「そういうのを全部ひとつにまとめてみれば?」って提案してくれて。

オリジナル・アルバムとしては2枚しか作品を発表していないバンドのトリビュートが制作されるのは珍しいことだと思います。どのような感想をお持ちですか?

M:そうだね...。まぁ、すごく認められた気がしてうれしかったよ(笑)。驚きでもあったしね。面識もないグループが、頼んでもいないのにカヴァーして取り上げてくれたりしたのは。驚きだったし、うれしかった。時々自分では、誰も僕の曲なんか聴いてくれてなかったんじゃないかって思ったりしたことがあったから(笑)。それなのに「ああ、誰かがちゃんと聴いてくれていたんだ!」って思ってうれしかったよ。自分にとっても誇りに思えた。

あなたにとっての思い出深いトリビュート・アルバムはありますか?

M:うーん、わからないな...。正直言って、あまり人のカヴァー・ソングって、好きじゃなかったから(笑)。一回誰かがやったものは、もうそのすべてが完璧なわけで、それをいじってもっと良くなることって、そうないって思ってたし。でも、僕らの場合は、ほとんどのカヴァーはオリジナルよりもよくできたって思ってるし、実際聴いて、「ああ、元々こうすりゃよかったな」って思ったりした曲もあった。

ヤー・ヤー・ヤーズによるカヴァーが本作の一つのきっかけになったようですが、あなたは彼らの大ファンだったそうですね。そういうバンドに自分の曲をカヴァーされる心境はどんなものですか?

M:彼らとは全く面識がないんだ。顔を合わせたこともない。彼らがカヴァーしてるって知ったときは、レンタルズの新曲を作るのに完全にひとりになれるような環境に行こうと思って、旅に出る直前だったんだ。空港にいたんだけど、飛行機に乗る直前に友達が電話して来て、「これ、聴いた方がいいよ!」って電話越しにヤー・ヤー・ヤーズのカヴァーを聴かせてくれたんだけど、彼のステレオに受話器を押し付けただけで聴かせようとしてるから、ほとんど何も聴こえなくて(笑)。だけど、「旅に出る直前だからこそ、君に聴かせたかったんだ」ってその友達が言って、それはすごくいいことだったなって思った。曲作りに入る前に、すごくいい気分になれたからね。それからしばらくして、他のアーティストが偶然またカヴァーに採りあげてくれたりして、すべてが始まっていったんだ。

アッシュとはウィーザー時代から、実に長い付き合いですよね。(アッシュの)ティムとマークは現在NYに住んでいますが、時々会ったりすることもあるのでしょうか? 改めて、彼らとの友情について話していただけますか?

M:最後に彼らに会ったのはLAだったな。彼らがNYにしばらく住んでたことは知ってるけど、今でもそうなのかはわからない。もしそうなら、NYに行ったら会いに行きたいな。本当に若くて、ファーストを出したころからの友達だからね。彼らと一緒にツアーを周ったし、そのころまでにはすごくいい友達になってた。ティムはレンタルズのセカンドでギターや歌を入れてくれたりもしたし、すごくいい人だよ。アルバムの中でも、最も長い間友達でいる人たちだし、今回のカヴァーも、僕らをサポートしたいって思ってやってくれたんだと思う。全然知らない人のカヴァーとは、ちょっと感じが違うね。すごくお互いにいい感情を持ってると思うよ。

タイトルの『Lost Out In The Machinery』はアッシュがカヴァーしている「Please Let That Be You」の歌詞から取られていますが、この言葉をタイトルにした理由は?

M:うーん...どうしてこのタイトルになったのかは正確にはわからないんだ。多分、最初の2枚のアルバムって、どこか迷子になってるような感覚があったからかもしれない(笑)。それがこういう形でひとつになって作品になったのはすごくうれしかった。自分たちが込めた情熱やエネルギーが、「誰にも理解されなかったんじゃないか」「聴いてくれた人なんかいなかったんじゃないか」って思ってたのが、どこかタイトルに出てきたんじゃないのかな?

THE_RENTALS_1006_2.jpgあ、タイトルを決めたのは、あなたの意見じゃないんですね?

M:正直言って、意見を訊かれたかどうかは覚えてない(笑)。

「The Man With Two Brains」をカヴァーしているティーガン・アンド・サラともかなり親しい関係のようですね。彼女たちとの関係を教えてください。

M:基本的には、アッシュと似てるんだけど、すごくいい友達なんだよ。こういうカヴァーの話を知って、僕らをサポートするためにカヴァーしてくれたんだ。ティーガン・アンド・サラに会ったのはずいぶん昔のことになる。友達が、彼女たちのアルバムをくれたんだよ。サラが書いた曲の中にすごく気に入った曲があって、ソロで慈善コンサートに参加したときにプレイしたいって思って、カヴァーすることにしたんだ。でも、自分でなかなかうまくできなくて、共通の知人を通じて彼女にコンタクトして、弾き方を教えてもらったんだよ(笑)。サラがメールでプレイの仕方を教えてくれたんだけど、なかなかそれもうまくいかなくて、そういうやりとりを通して友達になっていったんだ。彼女たちとはしばらくツアーをしたこともあったよ。僕がキーボードを弾いたり、ソロでオープニング・アクトを務めたり。すごくそのアルバムが好きだったから、勝手に何でもやってもいいって言われて、好きにキーボードを弾けたのは楽しかったね。それでアルバム、『So Jealous』にも参加して、キーボードを弾くことになったんだ。そのあとのアルバムでは、アルバムの半分でベースを弾いたりもしたね。彼女たちがLAにショウで来ることがあると、彼女たちと一緒にステージに上がってベースかキーボードを弾くよ。ウィーザーのカヴァーをしたりすることもあった(笑)。彼女たちと一緒に演奏するのは、すごく楽しい。

06年のNANO-MUGEN FES.でメンバーとして一緒に来日したレイチェル・ヘイデンが参加している、アジアン・カンフー・ジェネレーションの「Hello Hello」にはどんな感想をお持ちですか?

M:すごく気に入ってるよ。彼らが僕らの活動に関わってくれてるのは、すごくうれしいことだしね。彼らはすごく親切で、僕らをNANO-MUGEN FES.に招待してくれたりもした。すごく楽しいフェスだった。演奏するのも楽しかったよ。レイチェルもそこで歌ったし、それで彼らもレイチェルとプレイすることになったのかもね。面白い思い出としては、あのフェスのサウンドチェックをしていたら、レーベルの人が来てセットリストを見て、「間違ってるよ、「Getting By」が入ってない! あれはいつプレイするの?」って言いだしたこと。それで、「ああ、あの曲は練習してないから、今夜はやらないよ」って答えたら、「ダメだよ、絶対プレイしなきゃ」っていうんだ。「わかってないよ、もう全然やってなくて、演奏のやり方がわからないんだからできないんだ。もう数時間でステージなんだから、変なことはできないよ」って答えたら、まだ「ダメだよ、絶対プレイしなかったら、オーディエンスががっかりしてコンサートを去ってしまう。オーディエンスをがっかりさせたくはないだろう?」って言うんだよ。どうしたらいいのかわからなくて、ゴッチに僕らが演奏している間に曲を練習して、それで彼らのセットであの曲をやってくれるように頼んだんだ。一緒に僕らもステージに上がって、一緒にプレイできないかって。それで僕らが演奏している間に、アジカンのみんなはバックステージで必死に「Getting By」を覚えて、演奏してくれたんだよ。多分、僕らが演奏するよりもずっとうまく(笑)。

(笑)

M:それで、彼らがアンコールであの曲をプレイしたときに、ステージに上がっていって、一緒にプレイしたんだ。結果としてすごく楽しかったし、それで友情が生まれたんだよ(笑)。彼らは結局2晩プレイしてくれて、僕らを助けてくれた。それからしばらくして、彼らが「Hello Hello」をカヴァーしてくれて、オリジナルにはないギターなんかも入ってたけど、すごくクールで素晴らしいって思ったんだ。

日本盤のボーナス・トラックに「THE RENTALS & MASAFUMI GOTOH」の名義で収録されている「A Rose Is A Rose」に関しては、歌詞についてゴッチさんとの綿密なやり取りがあったようですね。どんなやり取りだったのでしょう?

M:あれは元々、『Songs About Time』に収められた42曲の中の1曲だった。このアルバムを出すときに、一緒に入れていいか確認したんだけど、自分のトリビュートで自分が演奏してるっていうのは、変なものだよね(笑)。とにかく、彼と話したのは、ショート・フィルムの中で他言語を使ったものを採り入れたいってことだったんだよ。一番最初のものを"First Season"って呼んでるんだけど、それは日本語から影響を受けたものなんだ。だから最初のものは、日本の季節、次はスペインの季節、その次はフランスで、最後がポルトガルだった。いろんな国のいろんなアーティストに参加してもらって制作したよ。ポルトガル、ブラジル、スペイン、フランス...。最終的には、こういう違うアーティストに違った形で曲に協力してもらおうって思ったんだ。それでゴッチに、候補の曲をいろいろと聴いてもらって、別バージョンを作れないかなって話を持ちかけたんだ。

なるほど。

M:それでゴッチが選んだのは、「A Rose Is A Rose」だった。奇妙な感じはしたんだけどね。だって、あの曲が他のどの曲よりも、一番他の言語で歌うのが難しいんじゃないかって思ったからさ。歌詞に言葉遊びがすごく多いんだ。それも文学的っていうよりも、奇妙な感じの。それを彼が選んだから、「それが一番難しいんだけど」って思った(笑)。演奏自体は一番簡単かもしれないけど、言葉の面で多分一番難しい曲だった。それで一番最後に作ったショート・フィルムの中で、彼とのヴィデオ・チャットのインタヴューを収録したんだよ。通訳と先に色々と話もしていて、もちろんゴッチは素晴らしいアーティストだから彼のアイディアは尊重するけど、先にどんなことを僕が考えてたのかをちょっと説明させてもらったんだ。とりあえず知っておいてくれてもいいかなって。彼はいくつか僕に質問してきたけど...基本的に言葉のことだけど...通訳の人は、それをそのまま日本語に訳すのは、無理だって言ってたね。<Woman is a woman, a rose is a rose>ってところは、有名なフレーズから取られてるんだよ。ゴッチは「それを正確に翻訳する方法はないから、自分のやり方でやらせてもらうよ」って(笑)。それで彼が正しいと思うやり方を信頼して、やってもらうことにした。彼の曲の消化の仕方はすごくいいと思ったね。他の言葉で歌ってもらった曲を自分で聴くのは、あのプロジェクトをやっていたときもすごく楽しい瞬間だったし、全然彼が歌っていることがわからないわけで、すごく信頼がないとできないことでもあったよ(笑)。

最後に、今後の活動予定を教えてください。

M:教えてあげることができたらいいんだけど(笑)。まぁ、今は『Songs About Time』にもうちょっと関心を持ってもらおうと思って動いてるけどね。あれはすごく変わったプロジェクトだった。コピーも365個しか作っていなくて、とりあえずまだ3分の1ぐらいしか売れていない。すごく高いからね。普通のCDじゃなくて、大きなパッケージだから。それにこれじゃ、ツアーに出れない(笑)。365枚しかないから(笑)。このプロジェクトのプロセスは全てウェブに載ってるし、曲を聴いたり映画を見れたりできるし、そういうのをみんなとシェアしていけたら、多分、コマーシャルな形態で...普通のCDの形で10曲ぐらいを選んだリリースもできるんじゃないかな。でも今は、そういうすごく革新的なプロジェクトを自分たちでできたっていうことを、すごく誇りに思ってるんだ。みんなに伝えて、映像や音楽に関心を持ってもらいたいと思ってる。

そういう、自分たちでも新しくてエキサイティングだと思えるプロジェクトをやっていくことは、アーティストとして本当に素晴らしい姿勢ですね。ただ守りに入った普通の作品を作ることもできたかもしれないけど、自分たちでもワクワクするような新しいことをやっていきたいっていうあなたの意気込みを感じられて、今日はすごくうれしかったです。

M:うん、本当に今、エキサイティングなんだよ。1年で自分たちがこれまでやってきたことを全部合わせた以上のものを作ったんだから(笑)。さっき、2枚しかアルバムが出てないアーティストのトリビュート・アルバムは珍しいって話があったけど、実際去年、僕らはアルバムを4枚作ったようなものだったから(笑)。そうやってこれまでを埋め合わせて、自分たちでもワクワクするプロジェクトをこれからもやっていきたいし、それをたくさんの人とシェアしていけたらいいなって思ってるんだ。

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『Songs About Time』の話を聞いて、すぐに思い浮かんだのが、アッシュによる現在も進行中のプロジェクト『The A-Z Series』。『A』から『Z』まで、26枚のシングルを、配信と限定のアナログ盤で2週間に1枚、1年をかけてリリースするという、『Songs About Time』同様に大ボリュームの、驚くべきプロジェクトである。マットとアッシュのメンバーは年齢こそやや離れているとはいえ、インタビューでも語られているように大の親友であり、共に短くないキャリアを過ごして来た中堅どころである。そんな彼らが変化の激しい音楽業界の中で、いかに自分達のやり方で、自分達の表現を追及していくか、その試行錯誤の表れが、まさに『Songs About Time』であり、『The A-Z Series』なのだ。今回のトリビュートは、そんな真摯な活動を続けるバンドに贈られたささやかなプレゼントであり、心からのエールなのではないか...なんて考えるのは、ちょっとロマンティック過ぎるかな?

2010年6月
質問作成、文/金子厚武
取材、翻訳/中谷ななみ

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