パラエル・ストライプス「Feyz」EP(Thistime)

Feyz.jpg 完全に一皮剥けた! 突き抜けている! いきなりよくわからない手放しの賞賛から入ってしまったが、聴いているあいだ、ひたすら拳を握り締めたまま意味もなく何度もガッツポーズをとりたくなるような音源となんて、片っぱしからCDやレコードを聴き漁っていてもそうそう巡り会えるものでないのだから許してほしい。極彩色の散りばめられたジャケットが何より力強く表明しているエレクトロ・サウンドが、27分弱の収録時間において終始フルスロットルのまま、一瞬も弛緩することなく怒涛の勢いで迫ってくる。本当に好盤。まずはここで彼らに対して全面支持を表明しておきたい。

 既に雑誌時代のクッキーシーンでも取り上げてきているが、改めて紹介を。Paraele Stripesは福岡を中心に活動している二人組のエレクトロ・ユニット。爽やかであどけない顔立ちながら獰猛な攻撃性も内に秘めたアメリカ帰りのヴォーカル、MARS(イケメン)に、丸っこく大柄、しかも引き篭もり気質でゲーマーだという松下(ヲタ)の組み合わせもキャラが立っていて素敵だ。そもそも、MARSと松下なんて名前もそうそう共存しえないだろう。

 ルックスもそうだが、こと音楽性においても「エレクトロ≒気取ったオシャレ」という、00年代に確立された安易な図式とはちょっと距離をとった佇まいも個人的に好感を抱いている。耳馴染みよく聴こえるよう小手先の洗練を目指す代わりに、勢いと疾走感を重視した粗めのサウンド・プロダクションが際立ったオリジナリティーを見せ付けている。冒頭の「Prototype」にそれはもっとも顕著だ。イントロで聞かれるヴォコーダーを介したロボット・ボイスから、ニュー・オーダーとダフト・パンクを同時並列で想起させられるいなたいメロディーがソウルフルな英語詩ヴォーカルに乗って飛び出してくる。アッパーでノイジーなバック・サウンドも強烈だが、「アッアッアー」と力任せに挟まれるコーラス・ラインが何より涙腺を刺激する。この曲は(先にリリースされたシングル『De:Prototype』収録の別アレンジだが...)バンドのmyspaceで視聴可能なので是非とも聴いてみてほしい。最高のパーティー・チューン。

 この、限りなくシンプルにエモくてパワフルなサウンドはそれこそ、今となっては「デジ・ロック(笑)」とバカにされて一蹴されることの多いものの、最高にメロディアスで尖った楽曲に溢れていた90年代ダンス・ロックを、00年代内向の時代を経て熟成させ、2010年型にアップ・グレードしたようでもある。日本から欧米のダンス・シーンを一歩引いて見渡した批評眼も反映されているし、ブンブン・サテライツのような日本のバンドの影響も見られる(もっとも、アチラと比較すれば遥かに繊細な音楽性であることは、両者のバンド名を比較すれば一目瞭然だろう)。続く「In Reach」「Take Down」といった楽曲も勢いそのままに駆け抜けていく(「テイク・ダーーーウン、イェー!」なんてベタなフレーズの連呼は、<Kitsune>系バンドやフレンチ・エレクトロ勢は到底やりたがらないだろう。このベタさが最高なのに)。

 ここまでだと「時代錯誤な連中なのかな?」と思われかねなさそうで心配だが、「日本からのポスタル・サーヴィスへの回答」と謳われた(実際、明らかに色濃く影響を受けている)内省的ポップ・エレクトロニカ・アルバム『Phirst Tense』(こちらも秀逸な内容!)を2007年時点でリリースしていて、ときにはアコースティック・ライブも披露する(!)彼らはさすが引き出しも多い。楽曲でいえばメロウでスローなイントロから入る「518」辺りに過去の名残りも見え隠れするが、サビでの爆発は筋の通った現行の彼らのモードを再確認させて頼もしい。点滅するキュートな電子音と太いベース・ラインの印象的な「Love」、8-bit的な音色とサビの小慣れた転調が面白い「Musiq」、最終曲のパンキッシュ・エレクトロ「4th Night」と、飽きさせない趣向を凝らしながらもEP全体に統一感があり、自分たちに見合った音楽的文法を発見したことに対する悦びと幸せに満ちている。冒頭の「突きぬけている!」というのはつまり、そういうことだ。進むべき道を迷わず突き進んでいる人たちの作る音楽がつまらないわけがない。

 唯一、贅沢な不満を挙げるとすればライブでの鬼気迫った荒々しいテンションを更にもう一押し反映してほしかった...というところだが、これは録音が物足りないというより、それだけライブが凄すぎるという意味で。福岡のバンドなだけ東京や他地域のファンはなかなかお目にかかるのは難しそうなところはあるが、ライブでは音源を余裕で上回る、跳ねて暴れての演奏が繰り広げられる。リリース・ツアーも控えているようなので、このEPを繰り返し聴き込みながらその日まで想像を張り巡らせてほしい。


(小熊俊哉)

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