プリドーン at 新宿 MARZ 2010/07/14

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photo by Takehiro Funabashi

 6月2日にファースト・ミニ・アルバム「手のなかの鳥」をリリースしたPredawnのリリース記念パーティーが、新宿のライヴハウスMARZで行なわれた。Turntable Films(O.A.)、Riddim Saunterそしてent(STRAIGHTENERホリエアツシのソロ・プロジェクト)をゲストに迎えた会場はオープンと同時に超満員。身動きが取れぬほど詰めかけたオーディエンスが見守る中、小さなアコースティック・ギターを持ったPredawnこと清水美和子が登場し、おもむろに「Another Sun」のイントロを弾きだしライヴが始まった。

 彼女のステージを観るのはこれが2回目。前回は新宿タワーレコードで行なわれたインストア・ライヴだったのだが、そのときと今回も印象は全く変わらない。「Suddenly」のP.V.での、まるで妖精のような姿とは打って変わり、Tシャツにスカート、ほぼノーメイクで髪を後ろにまとめた飾り気のない彼女の出で立ちは、余計にその才能を手つかずのまま放出しているように見えた。まるで、画家がアトリエから着の身着のまま飛び出してしまったかのような。

 そんなことを考えながら曲に浸っていると、突然、何処かで聴いたことのある歌詞の一節を耳にする。そう、ザ・ビートルズの「Lucy In The Sky With Diamonds」を、コード進行をアレンジし、メロディを崩しながらメドレーのように繋げていたのだ。それに気付いた瞬間から、一気にPredawnワールドに惹き込まれてしまった。

photo by Takehiro Funabashi
predawn_100714_2.jpg その後も「Suddenly」や「Custard Pie」、「Apple Tree」など、「手のなかの鳥」収録曲を中心に披露。彼女のライヴの魅力の1つが、演奏をしているときとMCをしているときのギャップにもあるのだが、思わずこちらまでつられてしまうくらい、顔いっぱいの笑顔で、「こんなにパーティーの似合わない人間が、リリース・パーティーなんてスミマセン!」と言ってペコリとお辞儀したり、「『今夜は歌舞伎町一"華やかな夜"にしたい』と私が言っていたってRiddim Saunterさんがステージでおっしゃっていましたけど、私、"華やか"じゃなくて"朗らか"って言ったんです!」と弁明(?)したり。そのたびに会場からは大きな笑いが起きていた。ちょっと天然っぽい彼女だが、曲に入った途端スッと表情が変わり、音の中に溶け込んでいく。ひょっとするとステージ上空には彼女のための"音楽の層"があって、時々そこから降りてきて我々に話し掛け、また戻って音と戯れているんじゃないか。そんな妄想をしてしまうくらい、音楽の中にいるときの彼女の存在は別格なのだ。

 中盤は、ドラムに秋山隆彦(KAREN、downy)、ヴァイオリンに楢原英介(VOLA & THE ORIENTAL MACHINE)を迎えて3曲を披露。控えめだが、要所要所で存在感を見せる2人の好サポートは、Predawnの世界観に彩りを添えていた。再び1人きりの弾き語りスタイルに戻り、静止したミラーボールに反射する光が木漏れ日のように揺らぐ中、「What does it mean?」や「Lullaby from Street Lights」など、「手のなかの鳥」の中でも特に切ないナンバーを演奏。先日のディスク・レビューで彼女の音楽性について、ポール・マッカートニーと細野晴臣の初ソロ作を引き合いに出した筆者だが、中でも「Lullaby from Street Lights」は、細野の「ろっか・ばい・まい・べいびい」と質感も似ており、その思いを改めて強く持った。また、本日唯一の日本語詞だった「虹色の風」は、未完成ながらも新たな可能性を感じさせる曲で、是非ありきたりな"風街フォーク"とは一線を画す世界を切り開いて欲しいと思う。

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photo by Takehiro Funabashi

 アンコールでは、名曲「Keep Silence」(アルバム未収録)と、 「Insomniac」(会場限定販売CDR『10 minutes with Predawn』、「手のなかの鳥」収録)を演奏し、この日のステージは幕を閉じた。MCで「みなさんが"朗らか"を少しでも持って帰ってもらえたら嬉しい」と語っていた彼女だけれども、個人的には"朗らか"の奥にある"切なさ"や"寂しさ"に心奪われた夜だった。

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