SLEIGH BELLS『Treats』(Mom & Pop Music)

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 そう、「感情のバロメーター振り切っちまえ」だろ? ブルックリンにて結成された男女2人組のデビュー作『Treats』、それはノン・ブレーキ、アクセル深く踏みっぱなしの、ギターを全面に押し出したエレクトロ・ポップ・ミュージック。M.I.Aが立ち上げたレーベルから発表されたこともあってか、音楽性はM.I.Aに通じるが、しかし、この荒削りな音楽性は凄まじい。乱雑とキュートな様が入り混じったサウンドが絶え間なく打ち鳴らされ、吐息は絶え絶え、体温上昇、エレクトロニック・ビートは腹にくるほど力強く、理性なんていうややこしいものは、ブレイカーが落ちたみたいにストンと消えて、ああ、そうだよ、最高じゃないか。

 噛みついてくるノイジーなギター・サウンドの連続とそのリフ、叩きつけられるビート、そこに絡まるヴォーカルが生み出す音に燃えるんだ。グッとくるどころか、カッとなる。だからいい。音の全てに、完全に、迷いがない。端的に言って、耳をつんざく。曲ごとに歌い方を変えるヴォーカルがアルバム全体の表情を豊かにし、みだらに歌ったかと思えばウィスパー・ヴォイスや絶妙なコーラス、ヴォイス・パフォーマンスを魅せもするが、荒々しい電子音、ビート、ギターが乱雑性を醸し出し、本来の正当なバランスなどあったもんじゃない。決して素通りできない音の洪水が続く30分。いわば、音が、キレている。本作は他人事じゃあ済まないんだ。しかしこの聴き終えたときの清々しさは何であろう。

 いつの間にか僕らは社会性の中にあって、本能的欲求を閉じ込めざるをえなくなった。だからして作り笑いや愛想笑いなど、本能的なものすらコントロールするようになってしまったかに思える。バイアグラをかじり、睡眠剤を飲む行為も本能をコントロールしているという意味では本質的に同義だ。無論、それらは悪いことではない。しかし忘れてはいないだろうか。人間とは社会によって突き動かされるのではなく、感情によって突き動かされるべきであることを。

 この作品はそれを思い起こさせる。音がややチープであろうと、バランスがおかしかろうと、乱雑性を持つ『Treats』は、感情の一切を吐き出しているからこそ、僕らを打ち、聴き手の感情を引きずり出し、放心に似た清々しい気持ちに溢れるのだ。これほど勢いのあるデビュー作らしい音楽は中々ないだろう。一度バンジー・ジャンプでもしてみようじゃないか。そんな具合に聴いてみるのも悪くない。リアルを感じられるから。一回でいい。聴いてほしい。

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