ザ・ローリング・ストーンズ『メイン・ストリートのならず者(デラックス・エディション)』(Rolling Stones / Universal)

|
Exile on Main St.jpg
 マーティン・スコセッシ監督のライヴ・ドキュメンタリー『Shine A Light』では、3人のゲストがストーンズと共演している。バディ・ガイはブルース・ナンバー「Champagne & Reefer」で貫禄を見せつけ、クリスティーナ・アギレラは楽しげに「Live With Me」をミックとデュエット。そして、ブルースを21世紀に継承するジャック・ホワイトは「Loving Cup」をいつになく緊張気味に歌う。「俺は不器用だから、ろくにギターも弾けない(I'm Stumbling And I Know I Play A Bad Guitar)」という歌詞に合わせた演出なら、すごいのに。

 『メイン・ストリートのならず者』には、その映画のタイトルにもなった「Shine A Light」とジャックの課題曲「Loving Cup」が収録されている。オリジナルは、ウォーホールがデザインしたジャケットがカッコいい『Sticky Fingers』に続くアルバムとして1972年に発売。このアルバムのジャケットにも注目しよう。ビートニクの時代からアメリカを撮り続けてきた写真家ロバート・フランクによる「追放された者たち」のポートレイトが最高にいかがわしくてぴったりだ。税金対策のために母国イギリスから「逃れた」ストーンズが、ピアニストとホーン・セクションを引き連れてメイン・ストリートに立った。ブルース、カントリー、ゴスペルそしてサイケデリックまでも飲み込んだ「流れ者たち」の音楽を鳴らすために。「ならず者」もカッコいいタイトルだけど、「放浪者」というイメージで聴くと印象が変わる。これは音楽のロード・ムービーだから。

 そして、この音楽のロード・ムービーには続編があった。リマスターされて、なんとCD1枚分11曲のボーナス・トラックを追加して登場! DISC1のオリジナル・アルバムはルーズな印象をそのままに、解像度がぐんとアップした。キースのリフに絡むミック・テイラーのスライド、そしてギター・ソロの繊細さが素晴らしい。「Sweet Virginia」のブルース・ハープは、ミックの息づかいまで聞こえそう。こもった感じを残しながらも、太さが増したビル・ワイマンのベース・ラインとチャーリー・ワッツのドラムを追っかけてるだけで18曲なんて、あっと言う間だ。

 そして、未発表曲とアウト・テイクで構成されたDISC2も聞きどころ満載。「Pass The Wine(Sophia Loren)」はラフでファンキー。壮大なバラード「Following The River」にはストリングス・アレンジでベックの親父デヴィッド・キャンベルが参加。「So Divine(Aladdin Story)」のイントロはまるで「Paint It Black」みたい。どの曲も完成度が高い。それもそのはずで、クレジットにはなんとドン・ウォズの名前がある。つまり、これは未発表曲を最新技術でアレンジし直したもの。発表するからには、歴史的価値よりもクオリティを重視する。そんなストーンズ(たぶん、ミック)の転がり続ける石ころっぷりは不変。要するに新曲じゃん!

 「ロックの名盤」だとか「ストーンズの最高傑作」だとか言われているこのアルバム。まだ聴いたことがないなら、自分の耳と心で確かめるべき。2枚組で3800円はちょっと高いけれど、その価値は充分にある。リマスタリングされた最新の音質から聴けるなんて、最高だと思う。未発表曲も新曲だと思って聴けば、余計な予備知識なんていらない。ただ楽しめばいい。

 ストーンズはこのアルバムの後、『山羊の頭のスープ』を煮込むためにジャマイカへ飛ぶ。ロバート・フランクはなぜかニュー・オーダーの「Run」のPVを監督している。放浪者たちの旅は楽しそうだ。

retweet