ROKY ERICKSON WITH OKKERVIL RIVER 『True Love Cast Out All Evil』(Anti- / Chemikal Underground)

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「伝説」だからいいなんて、まったく思わない。60年代にはレッド・クレイオラと並ぶ「テキサス・サイケデリック」の両雄などと称されていたサーティーンス・フロア・エレヴェイターズ(13th Floor Elevators)の中心人物ロッキー・エリクソン。

 レッド・クレイオラのメイヨ・トンプソンは、70年代末~80年代初頭のUKポスト・パンク/ニュー・ウェイヴ期に同地で裏方としてもアーティストとしても一時代を築き、90年代後半以降いわゆる「シカゴ系」のひとりとしてみたび盛りあがっていた。それに比べ、サーティーンス・フロア・エレヴェイターズのロッキー・エリクソンは、イマイチ地味ではあった。もちろん90年代のいわゆる「ローファイ」期にカルト的な人気を高め、スペースメン・スリー(もしくはソニック・ブーム)からマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン(ケヴィン・シールズ)をへて現在にいたるノイズ派にも根強い支持を得てはいる。

 たとえば最近、いわゆる「シューゲイザー」系のUKレーベル、ソニック・キャシードラル(Sonic Cathedral)から、ケヴィン・シールズも参加したロッキー・エリクソン・トリビュート・アルバム『The Psychedelic Sounds Of The Sonic Cathedral』がリリースされている。このタイトルは、60年代サイケデリックの定盤と評されるサーティーンス・フロア・エレヴェイターズの傑作ファースト・アルバム『The Psychedelic Sounds Of The 13th Floor Elevators』をもじったもの。ポスト・パンク以降とのつながりで言えば、傑作セカンド『Easter Everywhere』もでかいと思う(ニック・ロウやザ・ポップ・グループを出していたワーナー傘下レイダー・レーベルから、後者の『Y』と同じ79年に再発)。

『The Psychedelic Sounds Of The 13th Floor Elevators』収録曲からバンド名をとったファイアー・エンジンズというポスト・パンク期スコティッシュ・バンドのサウンド自体は、どちらかといえば『Easter Everywhere』のほうに近い気がする。彼らの直後の世代にあたるスコティッシュ・バンド、プライマル・スクリームは『Easter Everywhere』冒頭収録曲「Slip Inside Your House」をカヴァーしていた。ちなみにレイダーは同年、レッド・クレイオラの新譜もリリースしていた。そのころはラフ・トレードのプロデューサーとしても大忙しだったメイヨ・トンプソンが、87年のプライマル・スクリームのファースト・アルバムをプロデュースしているのも、おもしろい。プライマルのボビーとか、アラン・マッギーって、「ポスト・ポスト・パンク派」って感じですな(ぼくと同世代。共感できる:笑)。

 閑話休題...というか、マジな話、ロッキー・エリクソンによる、このニュー・アルバムを聴くときには、今つらつらと述べてきたようなことはすべて忘れたほうがいい、ような気がする。というわけで、冒頭のフレーズに戻る。

 ここで聴ける、滋味にあふれた、そしてUS南部の大地とかを思わせるうたそのものが、あまりに感動的なのだ。オッカーヴィル・リヴァーとの組みあわせも、まさにずっぱまりと言えるだろう。

 最初アルバムをかけると、あまりに劣悪な音塊が飛びだしてくる。ああ、サイケですか? ローファイですか? みたいに、ちょっと鼻白んだのだが(いや、そういった音楽は、もちろん好きですよ。だけど、あまりにロッキー・エリクソンのパブリック・イメージそのまま、って感じで...)、2曲目からは、もう正統派ど真ん中。カントリーやR&Bからちょっとエキゾチックなノリまでを感じさせるサウンドは、ジョー・ヘンリーやニーコ・ケース、トム・ウェイツからドクター・ドッグまでを擁するアンタイ・レコーズにふさわしい見事さ。『True Love Cast Out All Evil(真実の愛は、悪しきものを追い払ってくれる)』というフレーズが、ニュー・オーリンズっぽいノリで、素直に頭に飛びこんでくる。

 ラスト・ナンバーでは、ふたたび劣悪な音質になるのだが、それこそ南部の埃っぽい町のAMラジオから聞こえてくるようで、まったく不自然さはない。この曲のフレーズの一部が「Waltzing Matilda」を思わせるところが、たとえばポーグスのセカンドのラストや映画『渚にて』を想起させ、泣ける。「God Is Everywhere」。普通だったら、宗教がかって好きじゃない...みたいに感じるであろう曲名も、心にしみる。

 オッカーヴィル・リヴァーも、いい仕事をした。ロッキー・エリクソンと彼らや、アンタイとか、UKのライセンシーであるケミカル・アンダーグラウンドとの出会いの素晴らしさも、この曲名のフレーズと響きわたって、ああ、とりあえず生きててよかった、なんて思ったりする。

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