ROBYN「Body Talk PT1」EP(Konichiwa / Island / Cherrytree)

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 00年代のアーティストで「レディ・ガガより先にレディ・ガガをしていた」といえば、まずはローシーン・マーフィー(ガガの特徴といえるファッションに多大なインスピレーションというか、元ネタを提供している)。そして、スウェーデンのポップ・アイコン、ロビンの名前が挙げられるだろう。

 元々はスローでソウル・マナーな、いわゆる「90年代ポップス」で一度チャートを席巻したアイドルだった(デビューも早い。最初のアルバムは95年リリース。当時彼女は16歳!)彼女は00年代初めに一度自分の方向性を見失いかけたが、2004年にエレクトロに急接近。同じくスウェーデンを代表するエレクトロ・デュオ、The Knife(日本じゃ無視されすぎ...)の音楽性に大きく影響を受けた彼女は、自身による自身のためだけのレーベル<Konichiwa>(「こんにちは」のミススペル)を立ち上げ、大きくアーティスト指向を強めたセルフ・タイトルのアルバム『Robyn』を2005年に発表。2007年にワールドワイド・リリースされたアルバムは結果的に6曲もシングル・カットされるほどの超ポップな特大充実作となり、なかでも「With Every Heartbeat」はイギリスのチャートで1位に輝いた。華麗な転身による大逆転セールスの一方で「リアル・インディー・アーティスト」としても、ピッチフォークを始め多くの海外インディー系メディアの支持も集めた(意図的にメジャーを離れるアーティストが増えている、昨今の潮流の先駆けといえるかもしれない)。

 マドンナのヨーロッパ・ツアーの前座に起用、フィッシャースプーナーやロイクソップといったエレクトロ・シーンの大御所とのコラボ(特にロイクソップの去年のアルバム『Junior』に収録された「The Girl And The Robot」は涙が出るほどポップな名曲...)、何よりエネルギッシュ極まりない、リズムを強調しまくったライブ・パフォーマンスで盛んに話題を集めまくった彼女の次の一手は、「既に年内中にEP3枚をリリースする準備が整っている」と本人が豪語する、『Body Talk』シリーズ(最近はこういう三部作、四部作...ってのが多いですね。シングル曲DLがスタンダードな時代に対するアーティスト側のコンセプチュアルな抵抗。あるいは、リリース費用の問題もあるのかも。このミニ・アルバムも、CDのレーベル面をわざわざCD-RWをそっくり模したデザインにして、チープさを強調している)。彼女の創作意欲はここ極まれり。本作はその第一弾である。

 エレクトロ化以降の彼女の音楽性は《チャーミングでおバカ》と《トゥーマッチなほどシリアス》の対極する二つのバランスがとにかく素晴らしいのだが(前作でいえば前者の代表曲が「Konichiwa Bitches」、後者は「With Every Heartbeat」だろう。特に「Konichiwa Bitches」のPVは彼女の世界観を知るうえでも必見。僕は初めて見たとき泣きました)、今作でもそのバランスは過不足なく保たれている。感情をもった女アンドロイドについてチャーミングに歌った「Fembot」は、ついに待望のアルバムもリリースされたUffieが代わりに歌っても何の違和感もなさそうな、軽快なライミングの心地いいポップ・チューン。「私はあなたに全てを捧げた。だけどあなたは違う女を家に連れ帰った。(それでも)私は踊り続ける。」というサビの印象的すぎるフレーズが図太く攻撃的なブリープ・サウンドに載せて歌われる先行シングル「Dancing On My Own」は、そのまま彼女らしい独立独歩な姿勢を貫くことの所信表明のようでもある。それこそ、アルバム冒頭曲のタイトル「Don't Fucking Tell Me What To Do」が、彼女のすべてを言い表しているといえるだろう。

 前作でも好タッグを組んだスウェーデンのKlas Ahlund、Kleerupの他に、ディプロ、ロイクソップといった強力なプロデュース・チームに支えられた楽曲は、以降も今年31歳を迎える彼女だからこそ成立しうる、成功する/したことの難しさを歌った「Cry When You Get Older」、ダンスホール・レゲエにモロな影響を受けた(まんまな曲名の)「Dancehall Queen」、"退屈だからこの街から連れ出して。新しい音、クソ不真面目な音を聴かせて"とのたまう、これまた挑戦的なトライバル・チューン「None Of Dem」と、多様な趣向を凝らしつつ「Body Talk」の名に恥じない曲が続き、かと思えば一転してピアノとストリングスをバックに、悲しい愛について感傷的に歌いあげる「Hang With Me」、そしてスウェーデンの伝承曲であり、彼女がかねてから得意としたメロウなカバー「Jag Vet En Dejlig Rosa
(I Know A Rose So Fair)」で30分のミニ・アルバムはあっという間に幕を閉じる。

 あまりに充実しまくりな前作に比べるとさすがに半歩落ちるところはあるが、年内にこのクオリティー(あるいはそれ以上のものが...と期待したい!)のレコードがもう2枚出ることが決定的だとすれば、それはもはや驚異だ。ここまで読んでいただければおわかりのとおりのボンクラ気質のせいか、カイリー・ミノーグのようなエロ要素が希薄すぎるからか(ロビンは今年で31歳だから仕方ない...ボーイッシュなのもハマってるし...と言い訳もできるけど、42歳で今度出た新曲の、あのPVを出せてしまうカイリーが異常すぎる)どうにも日本ではウケが悪いが、いやいや。ボンクラだからこそ最高です。あくまでアイドル的スタンスのままインディー/DIY精神を発露しまくる、真に信用できる人だなー、と。

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