ザ・ドラムス

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THE DRUMS

美しくシンプルなメロディとリリック
この組み合わせに勝るほどパワフルなものはないよ


この夏を彩るとびきりなファースト・アルバムのリリース直後という、絶好すぎるタイミングで初来日を果たしたザ・ドラムス(The Drums)。一般的なインディ・バンドにないクールな雰囲気を漂わせながらも、愛するバンドの話題となると目の色が変わる彼ら。大盛況だったライヴの翌日、ヴォーカリストのジョナサンとドラマーのコナーに、レコードでのイメージを覆す「熱い」パフォーマンスから、「ザ・ドラムス以前」の過去、音楽的なバックグラウンドに至るまでの話を聞いた。

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ALL photos by Kenji Kubo


ジョナサン・ピアース(以下J):クッキーシーンは前からお気に入りだよ。So cool!

(なんか適当なこと言ってない? と思いつつ:笑)で、はじめに昨日のライヴ、素晴らしかったです!

コナー・ハンウィック(以下C):ありがとう。とてもうれしいよ。

最後から二番目に演奏された「Down By the Water」はとてもソウルフルだったし、一番最後の「Forever And Ever Amen」は高揚感に満ちたシンガロングな一曲だと思います。後者の歌詞を聴いたとき、オアシスの「Live Forever」やストーン・ローゼズの「I Am the Resurrection」を連想しました。彼らと比較されるのはあなたたちにとって好ましいことでしょうか?

J:それって信じられないことだね(笑)。

C:ストーン・ローゼズはいいバンドだし、オアシスもいい曲を書く技を持っている。そういうバンドと比べられるのは全然問題ないし、他にもいろいろなバンドが僕らの引き合いに出されるね。うれしいことだと思うけど、そのことが僕らのやる音楽に直接の影響を与えてはいないかな。

J:比較されるって面白いものだよ。だけど、「このバンドみたいになりたい」と思って曲を書くわけじゃなくて、あくまで自然に感じるがままにやっている。逆にいえば、この自然さが感じられなくなってしまったら僕たちの活動は終わってしまうのかもね。

昨日のステージで、ジョナサンの動きにはとにかく衝撃を受けました。

C:よく言われるんだよ、意外だって。レコーディング音源と全然似てないからだと思うけど。でも、自然とああなるんだよ。ある意味、ショーとして見せたい部分としては計算されていると言ってもいいのかもしれないけど、実際の動きに関してはあくまでオーガニックなものだよ。僕はコントラストというものを信じていて、曲においてもちょっと聴くと明るくて楽しくて...と思うかもしれないけど、歌詞の面ではすごく深いところがあったり、メランコリックな部分をもっているところがあったりする。そういう相対するものを提示していると思う。ライヴのあり方についてもそういうところがあるね。決してハード・ロックのショーみたいなものではないけど、演奏の激しさでいえばロックンロールに匹敵するんじゃないかな。

J:レコードよりステージのほうがいくらかタフな表現をしているね。

いやいや、「いくらか」ってものじゃないですよ(笑)。正直、レコードを聴いた時点ではとてもナードなものを連想していたので。「閉ざされていない、まったくもってヘルシーな(ジョイ・ディヴィジョンのシンガー)イアン・カーティス」みたいだと...。

J:最近のバンドのフロントマンに、歌うだけじゃなくてアクションもする姿勢が欠けているからじゃないかな。僕はイアン・カーティスもそうだし、モリッシーだったり、他にも一通り比較されている。他に誰もいないから僕だけいろいろ比較されるんだろうね。あとは髪型のせいもあるのかも。もし僕がロング・ヘアーでだったらイアンの名前なんて出てこないんじゃない(笑)? ライヴについて言えば、ステージにあがると自然にああなってしまう。自覚はぜんぜんないんだ。レコードと違うというのは周囲に言われて初めて気付いて、あくまで自分たちとしては自然にやっていたつもり。

C:レコードの音にある若々しさやナイーヴなトーンがライヴにも自然と出てきてるんだろうなとは思う。たとえば、構ってもらえない子供が「僕を見て」と言わんばかりにワーって泣き喚いて、メチャクチャやるようなものなのかも。

「ナイーヴ」っていうのは、日本だと《繊細な》みたいなニュアンスでとる人も少なくないけど、英語では《子供っぽい、ものを知らない、バカな》みたいな意味ですよね。オレンジ・ジュースの「Falling And Laughing」という曲の出だしのフレーズは"You may think me very naive"なんですが...。

J&C:(ここでジェイソンとコナー、オレンジ・ジュースというバンド名を聞いて、目を輝かせる)

日本だとそれを《繊細な...つまり内省的かつ内向的な》みたいに誤解して捉えことが多い。それを昔(オレンジ・ジュースの)エドウィン・コリンズに言ったら「なるほど、ニーオ・アーコウ(ネオアコ)という日本独自のジャンルとオレンジ・ジュースの間にある感覚のずれは、そんなところかもくるのかもしれないねー」みたいに言ってました(笑)。それはそれとして、今回ザ・ドラムスの歌詞を訳させてもらって、ものすごくシンプルで日本人にもわかりやすく、そういった誤解の起きにくい英語だと思いました。やはり、歌詞におけるコミュニケーションを大事にされているのでしょうか?

J:自分が惹かれるのも、そういうシンプルな曲が多いんだ。あまり凝ったり、実験性に走っていたりしないもの。だから、シャングリラスやロネッツ、シュープリームスみたいな60年代のガールズ・グループが好きだ。彼女たちは自分で曲を書いているわけではないけど、振り返ってみれば過剰なところが一切ない、本当に必要なところまで削ぎ落とした楽曲を歌っていたよね。美しくシンプルなメロディとリリック、この組み合わせに勝るほどパワフルなものはないよ。そこで変に技巧に走ると結局、その曲が持っていた可能性を水増ししてしまうことになるんじゃないかな。

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先日、取材前にあなたたちの公式サイトに掲載されているバイオグラフィーを調べていたんですけど、ジョナサンは昔、エルクランド(Elkland)というバンドをやっていたんですよね。実はクッキーシーンで一度インタヴューしていたんですよ...。

J:もちろん憶えてるよ(笑)。ベル・アンド・セバスチャン(とティーンエイジ・ファンクラブによる集合写真)が表紙の(43号)! 僕も家に一冊持ってる!

ああ、そうなんですね(なるほど、だから最初に、ああ言ってくれたんだ...)。感激です。今日も1冊持ってきたので、バックアップ用にどうぞ(笑)。

J:いいの? ありがとう! (コナーと一緒にページをめくりつつ、大笑いしながら写真を指さして)これは僕の兄弟で...、アダムも写ってる(注:エルクランドにはザ・ドラムスのギタリスト、アダムも参加していた。ドラムのジェシー・ピアースジョナサンの実の兄弟)。今でもこの本は大事に保管しているよ!

ありがとうございます! で(ザ・ドラムスのもうひとりのギタリストである)ジェイコブは、ホース・シューズ(Horse Shoes)に所属していた...というか、今も?

J:そう、彼は今も続けているよ。

なるほど! ホース・シューズはシェルフライフ(Shelflife)からリリースしています。あそこにはほかにシーヴス・ライク・アス(Thieves Like Us)もいたり...。そういえば、あなたたちのマイスペースの「影響を受けたバンド」欄には、古いバンドに混ざって(ニュー・オーダーの名曲からそのバンド名を冠したグッドなエレクトロニック・バンドであるシーヴス・ライク・アスのメンバーにはスウェーデン人がいるけれど、それと同じ国のバンドである)タフ・アライアンス(The Tough Alliance)の名前がクレジットされてますが...。

J:(オレンジ・ジュースのときとまったく同じように目を輝かせて)彼らの曲はひとつ残らず全部いい。グレートなポップ・ソングとはこういうものだという最高の好例だ。昔ながらの、いわゆる「ポップないいメロディ」というものを理解して書ける人たちだ。キャッチーなコーラスが書けるというのも一つの才能として挙げられるけど、そこに若さ溢れるボーイッシュなタフさも兼ね備えた、スポーティーと言っていいくらいの勢いも感じさせるというのは、現代の音楽シーンでは彼らくらいしかいないんじゃないかなって。

最高ですよね!

J:そう思ってたんだけど、悲しいことにバンドは終わってしまった。

そ、そうなんですね...。残念だ...。知らなかった(恥)...。

J:でも、メンバーのエリック(Eric Berglund)はCEOという新しいプロジェクトを始めていて、「Come With Me」という新しいシングルがこのあいだ出たばかりなんだ。すごくいい曲で、たぶんこの夏の僕のテーマソングになるだろうね。オススメだよ。今日だけで30回くらいは聴いてる(笑)。

おお!

J:タフ・アライアンスを初めて聴いたのは実家に住んでいた若い頃で、まあその翌年にはそこを離れることになるんだけど、彼らの「Make It Happen」という曲を聴いて、僕のフェイバリットというか、音楽的な《碇》のような存在が新たに見つかったと思った。僕にとって最も重要な5つのバンドに彼らは必ず入るし、何度でも信頼できるという気持ちにさせられる。好きなバンドの話ならいくらでもしてられるよ(笑)。

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昨日のライヴでは、開演前にプライマル・スクリーム、リチャード・ヘル、アンダートーンズ、セイント・エティエンヌがライヴの前に流れていました。

C;あれ、僕の選曲なんだ。2か月くらい前から今のツアーを続けているんだけど、前編・後編に分けて、自分たちがライヴの前に聴きたいと思うような曲を使ってきた。ニューヨークのヴァイブを感じさせるもの(リチャード・ヘルやストロークス)や、ノンシャーラタンツ(The Nonchalants)みたいな友達のバンドだったりというのを基準として選んでるよ。僕らにとってもお客さんにしても、これから盛り上がるぞって雰囲気の曲。好きなバンドが入ってるという人もいるだろうし、「これは何だろう?」と興味をもつきっかけになってくれるかもしれないし。

すごく不思議なんですが、どうしてあなたたちみたいな若い人たちが、リチャード・ヘルはともかくとして、初期のプライマルやセイント・エティエンヌのような、20年くらい前の、今ちょうどエアーポケットとなっている時期の曲を好んで聴くんでしょう?

J:そういった音楽が僕たちにとってとてもエキサイティングなんだ。セイント・エティエンヌはフィールド・マイスの「Let's Kiss and Make Up」をカヴァーしているよね。

そうそう、それがかかっててびっくりしました(笑)。名曲だけどオリジナル・アルバム未収の比較的レアな曲だと思うし...、僕(伊藤)にしてみると、今の会話はなんか20年前にタイムスリップしたような(笑)。

J:去年の夏にずっと聴いてたよ。僕たち、リミックスとかコラボレーションにはあまり興味がないんだ。でも、ちょっといかれた思いつきだけど、ひょっとしてセイント・エティエンヌにリミックスを頼んだら引き受けてくれるんじゃないかと思って。で、依頼したら本当に実現した。夢が現実になったなんてものじゃない。一緒にクリエイティブなことが出来たんだから、あのセイント・エティエンヌとっ...(注:彼らは「Forever And Ever Amen」をリミックスしました。そのヴァージョンがCDとかで入手できるかは不明ですが、ネットを探すと出てくるかも...)

ところで、プレゼントがあるんです。数か月前に開催されたクリエイション・ナイトというDJイヴェントのために作ったセレクトCD-Rなんですけど(クリスに手渡す)。

C:んー...、おお! (やはりライヴの開演前にかかっていた)プライマル・スクリームの「Velocity Girl」も入ってるし...、よさそうだね、これ! もらっていいの? ありがとう!

とくにレアなのは(笑)このザ・タイムズによる(ニュー・オーダーの)「Blue Monday」のカヴァー「Lundi Blew」かな? 元々のカヴァーはフランス語なんですけど、B面で日本語ヴァージョンが収録されていたという(注:エルクランドには、ニュー・オーダーっぽい部分があった。その片鱗はザ・ドラムスにもうかがわれれる)。

J:で、次の曲は(マイ・ブラッディ・バレンタインの)「Soon」! この曲、本っ当に素晴らしいよね! あ、これアンディー・ウェザーオール・ミックスなんだ。Cool! アンディー・ウェザーオールって今もクールなオヤジだよね! それに(そのCD-Rに収録されている)パステルズも大好きなんだ。グラスゴーでスティーヴン・パステルはレコード・ストアを経営してるんだよね。彼とも話をしてみたいなあ...。このCD-R、本当にうれしいよ。ありがとう。

先ほど名前が挙がったオレンジ・ジュースももとはグラスゴーで結成されたバンドで(注:80年代初頭以降ロンドンをベースに活動)、あなたたちは今度リリースされるエドウィン・コリンズの新譜に参加されたんですよね。

J:エドウィンは僕のアイドルだったし、とても夢だったんだ。オレンジ・ジュースは史上最高にクールなバンドだから。ツアー中にロンドンで会って、「スタジオに来ないか?」と誘われ、そして一緒に曲を書いて...と、どんどん話が展開していったんだけど、彼はとても親切だった...。今でも信じられない!

彼、本当にカッコいいですよね! ちなみに(先ほどのCD-Rの)最後の曲はブー・ラドリーズの「Wake Up Boo!」。それは僕(伊藤)にとって1995年のサマー・アンセムでした。かつてそれがそうだったように、あなたたちのアルバム収録曲は多くの人たちにとって、今年のサマー・アルバムに、きっとなるでしょう。

J&C:マジ、ありがとう!

夏っていいですよね(笑)。

C:Summer is cool!

J:僕はそうでもないかな(笑)。秋が一番好きだよ。割と年間通してこういう(涼しげな)服装なんだけどね。ここ一、二年は本当に忙しかったけど、日本はヴァケーション気分でリラックスして楽しめてる。

C:またサマーソニックで、すぐ戻ってくるよ(注:単独はないのか? うー、気になるー:笑)。本当にどうもありがとう!


2010年6月
取材、文/小熊俊哉&伊藤英嗣
通訳/染谷和美
撮影/久保憲司


*後半、ジョナサンとクリスの名前が入れ替わっている部分があったため修正しました。【6月28日(月)追記】

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