ティーンエイジ・ファンクラブ『シャドウズ』(PeMa / Merge / Hostess)

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 今やグラスゴー・バンドではヴェテラン組となったティーンエイジ・ファンクラブの、2005年の前作『Man-Made』以来5年ぶり、通算8作目のオリジナル・アルバムとなる新作『Shadows』。その前作と同じく自身のレーベルPeMaからのリリースとなる作品は、メンバーのノーマン・ブレイクが「今までの作品とは違う綿密なアレンジが実現できた」と語るように、セルフ・プロデュースで自分たちが満足いくまでじっくりと作られたサウンドが印象的だ。とはいえ彼らの持ち味である温かいメロディーとさわやかなハーモニーはもちろん健在。前述のノーマン、ジェラルド・ラヴ、レイモンド・マッギンリーの3人のソング・ライターが仲良く4曲ずつ(日本盤はボーナス・トラックを2曲収録)というここ数作でのフォーマットも変わらず、それぞれが今までのキャリアでも最良の曲を書いていて、完成度の高いアルバムとなっている。

 昨年のサマーソニックでのインタヴューではアルバム・タイトルについて「ダウンビートな曲が多かったり、歌詞も少しダークな内容だったりするから」と語っていたノーマン。確かに轟音ギターや性急なリズムは影を潜めているし、歌詞にも「Past」や「Dark」といった単語が繰り返し出てくるが、それは年齢的にも40歳を越え多くの人生経験を経た彼らの優しさに満ちたまなざしであり、決して後ろ向きなことではないだろう。先行シングルとなった「Baby Lee」や、サマーソニックでも披露されていた「Sometimes I Don't Need To Believe In Anything」と「The Fall」、ゲスト参加のエイロス・チャイルドのピアノと彼らのアルバムには常連のジョン・マッカスカーのストリングスが美しい「Dark Clouds」、これぞギター・ポップ!という「When I Still Have Thee」からラストのバラード「Today Never Ends」まで、すでにクラッシックに響く収録曲からはしなやかさと力強さが感じられ、結果アルバム全体としてこれまでの彼らのどの作品以上に前向きな希望を感じされてくれている。

 派手なサウンドもギミックもないけれど、彼らの曲がこんなにも心の琴線に触れるのは、そこに音楽への愛情と歌心があるからに違いない。タイトルである「影」がひとときも体から離れないように、そっと寄り添い僕らの心を満たしてくれる永遠のポップ・アルバム。往年のリスナーから、この作品で彼らのことを初めて知る人まで、一人でも多くのポップ・ミュージック・ファンに聞いて欲しい。

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