HOLY FUCK 『Latin』(Xl / Young Turks)

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 2004年の結成以来、超絶なライヴ・パフォーマンスで着実にファンを増やし続けてきた、カナダはトロントを拠点に活動するホーリー・ファック。本作は、前作『LP』からおよそ3年振りのサード・アルバムである。

 バンドの中心となるのは、キーボード&エレクトロニクスを担当するブライアン・ボーチャートとグラハム・ウォルス。昨年のフジ・ロック・フェスティヴァルにおける彼らのライヴを目撃した人ならご存知のように、ステージではこの2人がフロントで向かい合い、テーブル状のスタンドに並べられた小型キーボードやエフェクター、グルーヴマシンなどを巧みに操りながら演奏を進めていく。いわゆるラップトップや、最初からプログラムされたオケなどは一切使わず、リアルタイムで鳴らされるブレイクビーツやアルペジエイター(シンセ等に内蔵された、アルペジオを自動的に作り演奏する機能)に生のドラム&ベースを融合させていくパフォーマンスは圧巻の一言だ。彼らはレコーディングもライヴ同様、リアルタイム演奏による「1発録り」をデビュー当時から貫いてきた。ライヴの勢いをそのまま封じ込めるサウンドは、もちろん今作でも健在だ。

 冒頭曲「1MD」は意外にもドラムレスのアンビエント・ソング。ボーズ・オブ・カナダやブラック・モス・スーパー・レインボー辺りを彷彿させるシンセの音色が次第に重なり合いながら、まるで洪水のように押し寄せる様はシューゲイジング・サウンドにも通じるものがある。続く「Red Lights」は、ゴリゴリのファンキーなベースがザ・ポップ・グループの「Thief of Fire」を思わせるダンサンブルなナンバー。この曲といい、先行シングル・カットされた「Latin America」や、ヒップホップ・ビートが腰にくる「Lucky」といい、これまで以上にリズムに重きを置いた楽曲が目立つ。これまでライヴのサポート・メンバーだったドラムのマット・シュルツが、正式メンバーとして加わった頃も大きいかも知れない。1つ1つの楽器の分離も良く、エレクトロニカ色が強く荒々しい音像だったファースト『Holy Fuck』、バンドを「塊」として捉えたような音像のセカンド『LP』に比べると、まるで霧が晴れたように「奥行き」を感じさせるサウンドスケープだ。

 もちろん、前作収録の「Lovely Allen」で展開した多幸感あふれるサウンドも、「Silva & Grimes」や「Stilettos」といった曲の中で、よりパワーアップした形で引き継がれている。疾走するリズム、フワフワと揺らめくパッド・シンセ。その間を行き来しつつ、次第に高みへと駆け上がっていくヒプノティックなシーケンス音は目眩がするほど気持ち良い。

 傑作『LP』さえをも、軽く超える作品を作ってしまったホーリー・ファック。彼らの勢いは、未だとどまることを知らないようだ。

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