ザ・ハンドレッド・イン・ザ・ハンズ「ディス・デザート」EP(Warp / Beat)

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14_TheHundredInTheHands_cover.jpg 洋服を選ぶセンスというものがあるように、今はもう、情報を選ぶセンスを持っていなければならないのだなと思う。音楽にも同様に言えて、いわゆる、おもちゃ箱をひっくり返したような音楽にしても、その箱に「何が入っているのか」が重要なわけなのだ。思うに、なんでも詰め込めばいいってもんじゃあない。そこにおいてNYはブルックリンの男女2人からなるユニット、ザ・ハンドレッド・イン・ザ・ハンズの顔見せ的EP「This Desert」がWarpから発表されたのだが、いや、これ、すげえ、いいじゃねえか、と、なってしまったのだった。ほんとうに、センスが良いものしか詰め込んでいない。

 一口に言ってしまえばエレクトロ・ポップスで、もうひとつ言うならばブロードキャストのビートを強くしたような作品なのだけど、澄ました顔で風を切って歩くようなスマートなその音楽性は、選びに選び抜いた高級ブランドのスーツやら時計を身にまとっているみたいな、とでも言うか、エレクトロニック音も、ダブも、高級感を感じさせる部分のみを抽出し、取り入れ、エコーを効かせ、つまりはエレガント・ポップスここにあり、なのである。エレノアが時々歌うウィスパー・ヴォイスも確信犯的なエレガンスがあり、悔しいほどスタイリッシュ。ギター・リフはソリッドだが、あくまで聴きやすく熱を抑制している。アナタちょっと格好付け過ぎでしょうよ、というところもあるがそれがいい。

 そもそもNYはヴェルヴェット・アンダーグラウンドやテレヴィジョンなど、アートの匂いがするバンドを生みだした場所でもある。中でもアート文化が盛んなブルックリンにあって、ザ・ハンドレッド・イン・ザ・ハンズはアートの匂いがするもののみ、自らの審美眼で選び、取り入れ、たちまち泥臭さなど微塵も感じさせないアーティスティックな佇まいの音楽を作ってしまう。同じくWarpのナイス・ナイスの新譜がおもちゃ箱になんでもかんでも詰め込んだ音楽だとしたら、ザ・ハンドレッド・イン・ザ・ハンズはバッグに香水やら趣味のいい財布を入れてる感じ。タイム感も抜群で、最近の流行の、あるいは話題のものを取り入れる。他のバンドを横目でにやりと笑いながら、さりげなく胸ポケットからサングラスを取りだす感じなんである。実際にサングラスかけてるし。

 とはいえ、秋に発表されるアルバムではメンバーのジェイソンいわく「僕たちの全体像が見える作品になっているはずだよ」とのこと。要はこのEPは彼らのひとつの側面に過ぎないわけだ。しかし、ここまで格好付けているからには、アルバムでは田村正和ばりに気取ってほしい(嫌味ではなくて)。さて、アルバムではどんなオシャレ・サウンドを詰め込んでくれるのか楽しみだ。スマートな音楽に違いはないのだから(嫌味じゃなくて)。

 ただ、ひとつふたつ言いたいのは、流行を追うだけのユニットには、なってほしくないし、ベックのセカンド・アルバムがそうであったようにダサおしゃれな一面も見てみたい。というか見たくてしようがない。しかしそれすらも難なくやってのけてしまうんじゃないかというエリート気質すら窺える。こんな良質なのに聴いていると悔しくなってくる音楽なんて中々ないよ。

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