コーカス「ゴーイング・フォー・ア・ロンサム・ドリーム」EP(Babyboom)

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 心配御無用。安心すべし。もはやフィード・バック・ノイズの奏での中で、浮遊感のあるメロディと歌声を軸とする音楽性が定型化し、その音楽性を絵に描いたように押し出すバンドが溢れかえっていようとも、海外でも活動し評価を高めている日本の5ピース・バンド、コーカスがいれば大丈夫なのだ。コーカスもまた同じような音楽性だが凡庸なところはなく、これからのフィード・バック・ノイズ・ミュージックとでも言うべきサウンドを、新たな次元へと昇華するであろうと、彼らの「Going For A Lonesome Dream」EPを聴いて、僕はガッツ・ポーズをとったのだった。

 このバンドのサウンドを聴いたのは本作が初めてという腑抜けな僕だが、だからこそ衝撃度が高かった。懐に切り込むノイズ。かと思えば頭上でノイズが渦を巻く。しかもそのノイズの質感といったら無添加無農薬の野菜のようにサッパリとしていて、少々不格好な味がある。格好付けるのもいいのだが、やはり、不格好なロックは燃えるよねと、本作を聴いた僕は言う。英語を日本語のように平らな発音にした上手く使った歌声が功を奏し、すっと胸に沁み入って溶け込んで、僕はそのセンスの良さと清々しさに心打たれた。なおかつ、ときどきおどけた表情を見せるヴォーカルの余裕にニヤリとなり、「してやられた」と舌を巻く。静かに燃えるサウンドにユーモアを交えるという巧妙な「Going For A Lonesome Dream」EPは、フィード・バック・ノイズを武器とする多くのバンドの中にあって異彩を放っている。

 録音にROVOや大友良英を手掛けた近藤祥昭を起用。ミックスとマスタリングは藤井真生ということもあり、サウンドの質感、構築法に関して巧妙でエスプリが効いている。初めて聴いてもビュンと突き抜けるサウンドの心地良さは、じわじわと、ではない。瞬時に伝わる。それでもぜひ何度も聴き込んでほしいと思う。音の一つひとつが練られているのだ。

 音楽性は全く異なるけれども本作を聴いたとき、僕はザ・バーズのファースト・アルバムを聴いたときの気持ちになった。これから何か新しいことが始まる予感。未来はきっと輝いているだろう。そんなふうに思ったのだった。いや、きっと聴き手にこの作品はそう思わせてしまう力があるのだ。未来は「今」という無数に訪れる瞬間の連続によって成り立っている。だからこそコーカスは「今」を楽しませる。「今」の気持ちを豊かにする。しかして希望を感じさせる。僕は言いたい。この作品を「今」聴こう。「今」を聴き続けよう。

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