DINOSAUR FEATHERS『Fantasy Memorial』(Self Release)

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19_DinosaurFeathers_cover.jpg ここ数年、こと音楽に関して世界中でもっとも熱気に溢れた都市が(少なくともインディー・ロックのファンにとっては)ブルックリンであることに全く異論はないが、それにしたってここまで目まぐるしい速さで流行がアップデートされると、いくらネットがあっても、現地に居を構えないと情報を追えないよ...と、弱音を吐きたくなるほど新陳代謝が活発な状態が継続されている。いいことだと思う。

 とはいえ、露骨すぎるアニマル・コレクティブのフォロワーみたいなのには個人的にはあまり興味が湧かなくて、そういう連中も一括りにされるネオ・サイケデリック勢のムーブメントのなかでも、極端にトロピカルに純化したバンド/ユニットを去年くらいから特に面白がって聴いている。そろそろ気候も夏めいてきて、そういう音楽がいとおしくなる時期にまた差し掛かってきた。

 その流れでも、たとえば去年話題になったレモネードは随分アッパーだし(デロレアンも彼らの曲をリミックス)、この5月に国内盤もリリースされるタンラインズ(tanline=日焼け跡の意。この単語を入力して検索するとイイ画像がたくさん出てくる)の"Pokemon Dancehall"とも評される緩くチャラいビートは、もはやイージー・リスニング的ともいえるほどトロピカルに特化している。

 一方で、少し前に頭角を現し、僕にとってもアイドルの一人であるメアリー・ピアソンを擁するハイ・プレイシズは、最新作『High Places Vs Mankind』で、空気よりも軽かった(当時、他の誰よりもトロピカルな音質を具現化していた)ビートを捨て、シューゲイズな音とトライバル要素の醸し出す、ひんやりした冷たい空気の満ちている作品を提示してきた。これまたブームになっているネオン・インディアン、ウォッシュド・アウトら"Glo-fi"(オフビート・トランス+シンセ・サウンドによるアンビエント)のシーンにも共振する内容ともいえるが、また一方でそのGlo-fiも既に時代遅れで、今はWitch House(Gothic Chillwaveなどとも)だとする動きも。トロピカル→ゴスは80年代のニューウェーヴをそのままなぞっているような流れではあるが、やっぱりあまりにも消費が速すぎてもう、何が何やら。

 このように、昼食のバイキングで皿に好きなものを盛って口に運ぶような感覚でその日聴くものを選 べそうなほど「ムーブメントのなかのムーブメント」は入り乱れている状態だが、そんななかで自分が繰り返し愛聴しているのがDinosaur Feathers。やはりブルックリン在住の3人組である。

 何が素晴らしいか。まずは手っ取り早く彼らのMySpaceで「Family Waves」という曲を視聴してみてほしい。イントロのちゃかぽこした音の鳴りから牧歌的なコーラス、そして目が覚めるような気持ちよすぎる転調と、ひねくれポップ好きにもきっと響くものがあるだろう、興奮必至の楽しすぎる4分間。

 その他の楽曲も陽に当たりながら思い思いに過ごす気怠げな人々の光景が印象的なジャケット同様にピースフルでありながらどこか突き抜ける瞬間の連続で、オーストラリアの素敵なバンド、アーキテクチャー・イン・ヘルシンキ(この人たちも<キツネ>のコンピに収録されたりしてるのに、なかなか日本で話題になってくれない...)や、<K>レーベル所属のバンド、レイク(昨年リリースされた『Let's Build A Roof』は傑作!!)にもどこか相通ずる、のどかな世界観とそれに相反するひねくれ具合の両方を見せてくれる。

 曲名に「Vendela Vida」(アメリカの作家。日本でも『行く先は晴れやかに あるいは、うろ覚えの詩が世界を救う』などの著作が訳されている)と冠したりもしているが、音からはスノッブ臭は皆無。奇跡的なバランスを保たれている(こういうセンスの気配りは、ヴァンパイア・ウィークエンド以降のマナー......、なのかな?)。ここまで挙がってきた名詞にひとつでも引っかかりを覚える方には是が非でも推しておきたい。

 このアルバムは今年の3月初頭に既に発売されていたが、セルフリリースなこともあって届くべきリスナーの耳にまでなかなか行き届かなかった印象がある。とはいえ、そういう事情なので残念ながら国内での入手はいささか手間取るかもしれない(Amazonなどでは入手不可)。iTunes Storeでも購入可能だが、フィジカルで入手するなら彼らのmyspaceあるいはホームページ経由での注文が一番早いかと。全曲視聴も可能。

 さらに、アルバムに先駆けて昨年リリースされた4曲入りEPは現時点でもフリーダウンロード可能なので、気になる方はまずはここで彼らの音を試してみてほしい。

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