COWBOY JUNKIES『Renmin Park』(Latent / Zoe)

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 オルタナ・カントリーの静謐なる先駆者でもあり、25年間に渡ってオリジナル・メンバーのまま活動を続けているカウボーイ・ジャンキーズ。彼らのみならずカナダ・ロック史をも代表する『The Trinity Session』(超低予算で教会を借り、マイクを一本だけ立てて14時間足らずで録音。ヴェルヴェット・アンダーグラウンド「Sweet Jane」の美しすぎるカバーも含むこのアルバムは、ピッチフォークの80年代トップ100アルバムにもリスト入りしている)を、ライアン・アダムス、ナタリー・マーチャントといった面々も交えて再演し、映像作品化もされた2007年の『Trinity Revisited』以降、久々となる新作は「Nomad(=流浪者) Series」と銘打たれた4部作の第一弾。

 バンドのギタリストであり、メインのソングライターでもあるMichael Timminsと彼の家族が三カ月に渡って中国の靖江市に滞在した日々からインスパイアされた、異なる世界で育ち、永遠に結ばれない男女の物語を歌ったコンセプト・アルバム、タイトルもずばり『Renmin Park(=人民公園)』...という設定もかなり目を引く、キャリアを通じてもかなりの異色作といえる。(海外のレビューではソフィア・コッポラの映画『ロスト・イン・トランスレーション』となぞらえて評価されているようだが、たしかにテーマは相通じているのかもしれない)

 本作では琵琶や二胡といった楽器が用いられるなど、バンド自身がかなり中国の音楽に接近している。かなり賛否あるだろうが、元々ゴシックでアンビエンタルなルーツ・ミュージック解釈を提示し続けてきた彼らの世界観と中国音楽の相性は抜群で、たとえば冒頭三曲目の"Sir Francis bacon At The Net"では、シリアルな中国/香港映画のスコアで多く用いられるような旋律でディストーション・ギターが唸りまくり、近年発掘ぶりが目覚ましいアジアン・アシッド・フォークの雰囲気そのもの。また、Michael自身がフィールド・レコーディングして中国から持ち帰った音素材がアルバム全編で効果的に 用いられており、サイケデリック/オリエンタルな演出に貢献している。もちろん、本来の持ち味である洗練された風通しのいい楽曲も多く収録されており、アルバム全体の粒がかなり揃っている。ホープ・サンドヴァル~ベス・ギボンズの系譜に連なるだろうMargo Timminsの冷ややかでアンニュイな歌声にも相変わらずウットリさせられる。

 また、中国ロック界の大御所ふたり、许巍(Xu Wei)と左小诅咒(Zuoxiao Zuzhou)のゲスト参加と、本人たちの楽曲の英詩訳カバー(それぞれ、「My Fall(我的秋天)」「I Cannot Sit Sadly By Your Side(我不能悲傷地坐在你身旁)」)も披露されている。カバーの出来も秀逸だが、リンク先を参照のとおりオリジナルも抜群にかっこよく(特に许巍は欧米のオルタナ・ロックの影響をモロに受けており、とても聴きやすい)、中国ロック・シーンのエデュテイメントとしても機能しているといえるだろう。

 バンド自身も相当熱を入れている様子の「Nomad Series」では来年11月までに残り三枚のアルバム・リリースを予定しているそうだが、次作『Demons』は、バンド自身とも交流が深く、先述の 『Trinity Revisited』にも参加し、昨年のクリスマスに亡くなったシンガー・ソングライター、Vic Chesnuttに捧げる彼の楽曲のカバー集になるとのこと。生前の彼も参加した『Dark Night Of The Soul』もまもなく発売の見通しだが、それと併せて今後のカウボーイ・ジャンキーズの活動も目が離せない。

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