ストーン・テンプル・パイロッツ『ストーン・テンプル・パイロッツ』(Atlantic / Warner)

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 セルフ・タイトル、セルフ・プロデュースでの堂々たる復帰。この音、この魅惑的な声。1曲目「Between The Lines」のギターを一発聴いただけでストーン・テンプル・パイロッツ(以下STP)だとわかる。本当に様々なことがあったけれど、やっと「おかえり!」と言える。

 2008年、それぞれ別々に活動していたメンバー達が、なんとSTPとして再集結することが発表された。これには正直驚いた。なんせヴォーカル、スコットの度重なる薬物問題で、解散する数年前からメンバー間には亀裂が入った状態で、当時は逮捕、リハビリ、脱走、暴力といった悪いニュースばかりが続き、何度もツアーが中止になり、これではバンドが崩壊しても仕方ないと思わざるを得ない状況だった。そんな中でも良い作品を作ってくれていたけれど、これほど悪い状況が重なればもう修復は無理だろう...と思っていた。しかも再結成ライブから今作発表までは約2年を要しており、その間ひやひやしたファンも多かったことと思う。けれどこうして無事に届けられた新作は、9年の歳月を軽々と飛び越え、再び戻ることがわかっていたかのように、堂々と誇らしげな音を鳴らしている。

 このところ90年代のグランジ/オルタナティヴを代表するバンド達が次々とカムバックして、当時どっぷりだった私には嬉しい状況となりつつあるわけだけど、やはりグランジ/オルタナティヴというと、そもそも音楽性で括られたのではないということもあり、90年代という時代の空気感を色濃く映し出したジャンルというイメージが強い。再結成にはつきものの心配事ではあるが、グランジ/オルタナティヴには特に、やはり90年代の匂いがついてまわるのだろうか? 今の音を出せるのだろうか? という懸念があるのは確かだ。USオルタナの代表として挙げられるSTPも、少なからず当時の時代の波に影響を受けていただろう。

 しかしこのアルバムを聴く限り、彼らにはもはや時代感など関係ない。むしろブルースやカントリーの要素がこれまでよりも更に強くなり、影響を受けたというビートルズやレッド・ツェッペリンを思わせる60〜70'sの空気も漂っている。それは回帰や方向性の変化ではなく、自分達の中に根差した音楽を、ジャンルや時代に捉われることなく、ただただ自由に表現しているだけなのだと思う。様々な問題や衝突、空白期間を乗り越えて、結局は(いい意味で)収まるところに収まって、今とても自由になったのではないか。そして、同じく再結成したオルタナ勢のスマッシング・パンプキンズやホールがヴォーカル以外総入れ替えになったのと違い、STPはオリジナル・メンバーで戻ってきたということが何より大きいだろう。この作品から、自信に満ち開放感溢れる音を感じるのは、自分達の根底に流れる音楽を素直に表現すること、この4人でしか出来ないことを存分にやったからに違いない。

 元々幅広く独特の音楽性を持つバンドだが、今作ではますます広がりを見せていて、印象的なギターリフで「これぞSTP」と思わせる楽曲郡から、解散中の活動からの影響であろうハードロック色の強い「Fast As I Can」、スコットの歌声とピアノが美しく絡み合う「Maver」、ボサノヴァ調の「Samba Nova」へと繋がっていき、聴き終わる頃にはまるで別の作品かと錯覚するほどだ。その流れは、時が止まった9年前からそれぞれの経験を持ち寄った今現在に辿り着く時系列のようで、彼らが別々に生きてきた日々を音楽という形で表現しているようにも思える。アメリカン・ロックの豪快さ・軽快さと幻想的で繊細な美しいメロディ、猥雑さと突き抜けるような透明感、そんな正反対とも思える様々な要素をスコットの七色の歌声によって混ぜ合わせ、くるくると表情を変えながら、しっかりと「今」の音を鳴らしている。

 バンドとは不思議なものだ。あんなに人間関係が壊れていたはずなのに、ひとたび音を出せばそのバンドの音になるのだから。悪いニュースを耳にして、この人はいつ死んでもおかしくないと思った事もあったけれど、こんな風に同じ音を出せるのも生きていればこそ。こうして再びバンドに命が吹き込まれ、自由に音楽を奏でている彼らに会えたことを、純粋に嬉しく思っている。

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