ザ・フォール 『ユア・フューチャー・アワー・クラッター』(Domino / Hostess)

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 UKロック・シーンで最も気難しい男と呼ばれるマーク・E・スミス率いるザ・フォールがドミノに移籍してのアルバム。バズコックスを中心としたマンチェスター・パンク・シーンの一端を担いつつも音楽的にはポスト・パンクと言えるものをすでに体現していたということもあり、近年のポスト・パンク的バンドから尊敬される存在となったが、日本では相変わらずの立ち位置であると思う。聴く人は止められない。出たら買う、そんなかんじ。誰々が尊敬しているから聴け、みたいな言い方をよくされるバンドでもあるが、それでも手を出す人はそんなに多くないのかな、と思うが、こうして連続して日本盤も出るわけなので、それなりの広がりはあったのか。

 いつもどおりだがいつもどおりではないという感じで細かいところを言えば様々な変化はあるが、一聴して、フォールなんだ、これは。厭味な言い方をすれば、フォールによるフォールらしさの再現と言えなくもないが、それが唯一の存在であって誰も真似できないというところに大きな意味がある。フォールとは労働者による芸術の爆発であり、マーク・E・スミスはその体現者である、ということを今更ながら強く意識させる、いつになく粗野で生々しい録音。これがバンドである、と言わんばかりの音。タイトなバンド・サウンドにマーク・E・スミスの吐き捨てるようにぶっきらぼうなヴォーカル。90年代初頭にフォールは一度だけ来日しているのだが、そのときの、シンプルでクールで淡々としているのだけど段々と観ている方が熱くなってしまうような感覚を思い出した。つまり、いつもどおり「聴くべき」アルバム、だということだ。

 通して聴いていて、最後の方でふと聴き憶えのあるメロディー(?)にブチあたった。おお、これはワンダ・ジャクソンの「ファンネル・オブ・ラヴ」じゃないか。クランプス経由で知った人も多いと思われる妖しい魅力を持った曲なんだけど、ここではかなりアレンジされていて、唄い方もかなり崩しているが、「ファンネル・オブ・ラヴ」に間違いない。以前、彼らはキンクスの「ヴィクトリア」をかなりストレートにカヴァーしてたこともあったけど、今回、どういうつもりでこの曲を持ってきたのか、興味が湧く。

 前作は2007年だったし、同時にマウス・オン・マーズとのユニット、ヴォン・スーデンフェッドやゴリラズへのゲスト参加などもあったから、いいペースでの新作と言えるのではないか。フォールが新作を出したというと、なんか不思議な安堵感があるな。フォールの新作が出ないという時がいつかくるのだろうけど...。

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