ザ・エックス・エックス at 代官山ユニット 2010/05/10

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photo by Kazumichi Kokei

 傘を持って行くかどうか悩むような曇り空、平日6時の代官山に黒山の人だかりができていた。

 殆どコスプレと思える様なゴス系のメイクやファッション、安全ピンだらけのパンク・ファッションの若者でごったがえす入り口。
多種多様だが、かなり気合いの入ったファッションの若者が多い。地下深く階段を下りていくと、バー・カウンターに並ぶ人たち、開演を待ち、だれもいないステージに向かう人たち。音楽不況ってホントかよって思うほどの盛況ぶりだ。

 ステージに目をやると、「X」のでかいバナーにあおるように薄い緑色の灯り。

 ショーが始まる。妖しい色の照明がステージからオーディエンスの方に、すっとまっすぐ進み彼らの姿はシルエットだけになる。

 一曲目「Intro」が始まって、僕がこのバンドに対して抱いていたある種の既視感のようなものはことごとく覆された。ダイナミックに揺れながらベースを弾くオリヴァー、ポーカー・フェイスでギターを弾くロミー。彼らが出す音は、イメージ通りだった。しかし、ジェイミーがMPCを叩き出すと、印象ははっきりと変わった。思いもよらぬ分厚い低音が会場を埋め尽くしたからだ。

 僕がこのバンドを初めて目にしたのは、youtubeの映像だった。それも、この動画の所有者が以前アップしていたウィリー・メイソンの映像を見たかったからだ。それを初めて目にしたとき、まず最初に思い出したのは、ヤング・マーブル・ジャイアンツ(Young Marble Giants)の名前だ。80'sリバイバル的なサウンドを、古い音楽が好きな若者がやっているのだと勝手に思っていた。

 僕はオリヴァーへのインタヴュー中、ハーモニーの音数の少なさを指摘した。彼らのような耽美的な魅力のある音楽を、なぜハーモニーを厚くする方向で実践しなかったのか不思議に思ったからだ。ギターではほとんどコードは弾かれず、アルバムを通じて多くても3声くらいのコードで構成されており、それがヤング・マーブル・ジャイアンツ的にも感じたのだった。しかし、それは大きな誤解だったと言わざるを得ない。

 比べるならダブ・ステップ、グライムではないかと思える(5月5日にWombで見たリッチー・ホウティンのセットよりローが出ていたとはっきり感じた)低音の処理。ギターやベースが帯域の隙間を縫うようにフレージングしていく。アルバムを聴いて、僕が感じた薄さなど、微塵もなかった。

 誰もこのステージを観て80年代の音楽を想起しないだろう。ニュー・ウェーヴやインディー・ポップのチープさはどこにもなかったのだから。まぎれもなく、現在のサウンドなのだと思った。

 そんな驚きに充ちたステージだったが、MCは招致元のホステスのスタッフへの丁寧な謝辞があった(大観衆には最後にand youと付け足していた程度:笑)くらいで、アルバム収録曲を矢継ぎ早に演奏し、アンコールまで含めて一時間を切る、今年僕が見たライヴの中でも最短のステージだった。

 アンコールを終わって、無表情に見えたロミーがマイクに向かいThank youと二度口にしたとき、彼らも僕が感じたような手応えを感じていたのではないかと思った。彼らの音楽はCDで聴くだけはわからない。あのステージを観た後なら、誰でもそうはっきり言えるだろう。

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