YOUNG JAZZ REBELS『Slave Riot』(Stones Throw)

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 ほとんどの音楽は、聴く前から大体どのような音なのか、なんとなく分かっているものが多いと思えるが、もし、破滅覚悟の気持ちで、そして暗闇に身を投げる度胸でもって未知の音楽体験をしたいと思う人がいるならば、僕は迷わずこの作品を薦めたい。本作もまた、破滅する覚悟を持つアーティストの音楽だ(クッキーシーン読者にそういう音楽を求めている方が多いか分からないけれども...)。  

 聴けばたちまちのうちに心揺さぶられ、飲み込まれ、放心寸前の心地が胸の深くから湧いてくる。唯一無二のビート・メイカーかつ西海岸アンダーグラウンド・シーンきってのプロデューサー、マッドリブが別名義で創りだした『Slave Riot』、それはまさに、今まで以上に緊迫の色が濃いインストゥルメンタル・ミュージック。重心を低く保った重量感のあるグルーヴにはまり、四方八方から聴こえてくるパーカッションが思考の弛緩を誘う。ファンキーなベース音や妖しげなサックスとストリングスが鼓膜に飛び込み、その魅惑的な音の全てが辺りの重力を歪ませる。一瞬でも気を許せば夢遊病者と化すであろうサウンドに痺れる53分。一気に聴かせる。

 これはちょっとBGMとしては聴けないな、という感じであり、面と向かって一対一で聴くべき音楽だ。決して歌心に溢れているとは言えないが、「え?」っとなったり「お?」っとなったり、はたまた「ん?」っとなったりと、奇妙キテレツな音色に溢れているものだから突発的な新鮮性に驚き、ざわめき、聴いているうちにもっともっと音が欲しくなる。中毒性がある音楽とはこのことかよと驚愕した。クールでいて危険な香りがエキサイティングであり、狂乱、乱雑、それらが醸し出す不謹慎とも言える快楽に焦がされる。しかも耳を近づければスウィング感が十分あるのだ。

 マッドリブはイエスタデイズ・ニュー・クインテット名義でクラブ・ジャズ的な音楽も、ジャジーなヒップ・ホップも発表しているが、この作品でフリーに突入し、自由という名の束縛の中で自分は一体どれだけできるのかと賭けに出た。それが伝わるからなおさら痺れる。僕は乱れろと言いたい。マッドリブの過度期にあたるであろう本作で乱れなさいと。そうして訪れるは狂乱の渦に焼かれる快感。痺れが止まらない。

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