ザ・デッド・ウェザー『シー・オブ・カワーズ』(Third Man / Warner)

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 正直に言って、デッド・ウェザーの1stアルバム『Horehound』は熱心に聞き込んだお気に入りの1枚というわけではなかった。ホワイト・ストライプス、ラカンターズに続いて登場したジャック・ホワイトの第3のバンド。ザ・キルズのアリソン、クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジのディーン・ファーティタ、ラカンターズからはリトル・ジャックが参加。またしてもスーパー・バンドと言えるメンツが揃った。さて、ここまで豪華なメンバーでどんな音を鳴らすのだろう?ジャックがドラムを叩き、アリソンのヴォーカルが叫ぶ。ブルースを基調としたカッコいい曲が揃ったアルバムだったけれど、そこには想像を超える発見が少なかった。3つめのバンドを結成してまでも鳴らしたい必然性が、あまり感じられなかった。

 だけど、そんな印象もライブを体験した後では、大きく変わる。「ジャックがドラムを叩く姿を見てみたい」という下世話な好奇心も手伝って、僕はZepp東京に向かった。3月31日、デッド・ウェザー一夜限りの来日公演。真夜中の水の底のような暗闇と青のライティングに浮かび上がる凶暴なノイズとブルース。自由なジャムやメンバーのパート・チェンジを繰り返しながら、一瞬も目をそらすことのできない熱い演奏が続く。ジャックは、手数こそ多いが、おかずは少なめで叩きまくる。そのドラムは、ギターと同じように吠えまくっていた。ヒップ・ホップ、クラウト・ロックという言葉さえもアタマをよぎる壮絶なグルーヴ。「第3のバンド」という思いは、2時間後に完全に吹っ飛ばされていた。

 ステージの青いライティングは海。そして、臆病者たちの色。『Sea Of Cowards』と名付けられたこの新作を聞きながらそう思った。アルバムは、来日公演でもプレイされた「Blue Blood Blues」から始まる。シンセサイザーとキレのあるスネアのイントロに導かれて、中盤で一気に爆発する「The Difference Between Us」やブルースとクラウト・ロックが合体した「I'm Mad」、そしてアリソンとジャックのヴォーカルが二重人格のように絡み合う「Die By The Drop」など、ライブでのグルーヴをそのまま封じ込めたナンバーが並ぶ。ディーンのギターとリトル・ジャックのベース・ラインは前作よりも存在感を増し、アリソンのヴォーカルと同調する。

 鋭角な言葉と一体になったリフの嵐。死の天候の中で、仮面を被った4人の臆病者たちが進む海。そこに放り込まれた僕たちは、ジャックの思い通りにブルースに翻弄される。その姿はたぶん、踊っているようにしか見えないだろう。

編集部より:日本盤は5月26日(水)リリース予定。

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