THE STRANGE BOYS 『Be Brave』(Rough Trade)

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 音楽を聴いていて、うかつにも笑ってしまったとき、やられたと思う。だけど笑ってしまうと思うのだ。これを聴いたら。近年、ここまでアクの強いヴォーカリストがいただろうか。アルバム2曲目、「A Walk On The Bleach」のイントロ、エレクトリック・ギターを爪弾くか細い音と、2拍、4拍を刻むハイハットの薄いバックに、唄うライアン・サンボルの声を聴いて、片岡鶴太郎のやる浦辺粂子のモノマネ(古いか)を思い出して笑ってしまった。そうして、彼の声にひかれ、なんとなく繰り返し聴いているうちに、いつのまにか彼らの音楽への真摯で挑戦的な姿勢に胸を打たれていた。

 このテキサスはダラス出身の6人組の音楽に触れたのは、この『Be Brave』が最初で、もう10年近く活動していることを知って驚いた。なるほど、カントリーやフォーク・テイストの、いなたい、だけどぐっとくるグルーヴ感(聴いてるより印象よりはるかに難しい)も、うなずける。実はこのレヴューを書く前に、渋谷に『Be Brave』以前のリリースを探しに行ったのだが入手できなかった。そればかりかこの『Be Brave』さえなかった。彼らがどういう道を辿ってきたのか知る術がないのが非常に残念だ。

 ここ最近、アントニー・アンド・ザ・ジョンソンズ(Anthony And The Johnsons)やアリラ・ダイアンのリリースで好調のラフ・トレードからリリースで、僕がレコードの5倍はいいだろうと推測している、ライヴのクオリティの高さが認められたのではと思う。ネオ・フォークなんて呼ばれている人たち、エミー・ザ・グレイトやアリラ・ダイアンのファンにはもちろん自信を持っておすすめできるのだが、批判を恐れず言えば、ボブ・ディランのファンにこそ聴いてほしい。ボブ・ディランを長く聴いてきたファンには、きっと僕と同じように、ライアンの声を笑った後には、彼らのすばらしい演奏にじっと耳を傾けてくれるはずだ。

 これからも、このアルバムをかけるたびに、その「うた」の純粋さに胸打たれ、アルバムが「Friday In Paris」にさしかかる頃には、もうほとんど泣きそうになるくらいの感動を覚えるのだろう。いつしか、ライアンのおかしな歌声を笑っているのは、そんなこっぱずかしい感動への照れ隠しではないかと、疑いはじめるのだ。

 ラフ・トレードのページで試聴できます。

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