SERENA MANEESH『Serena Maneesh 2: Abyss in B Minor』(4AD)

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 今作はノルウェー出身の新世代シューゲイザー・バンド(ニューゲイザーではなく)、セレナ・マニーシュの4AD移籍後、初のアルバム。

 最初にアルバム全体を通して聴いた時に、前作との作風の変化に驚きました。端的に言うと、セルフ・タイトルを冠した前作よりも、はるかに耽美的で閉鎖的。

 もともと、シューゲイザーからの影響を公言していたけれど、それを執拗に押し出すのではなく、あくまでサウンドの一要素として取り入れていた彼ら。中心人物でありギタリストのエミール・ニコライセンと、その妹でありベーシストのヒルマ・ニコライセンは音楽家一家に生まれたこともあり、ロック以外の音楽からも影響を受けており、その雑多なバック・グラウンドをヴァイオリンやオルガンのパートもいるこのバンドで鳴らすことによりカオス的になり、それが結果的にシューゲイザー・サウンドとして成り立った、と言った感じでした。デビュー・フル・アルバムである前作を聴いた感触としては、シューゲイザーと同時に80'sポスト・パンクやゴス周辺のようなカラーを前面に打ち出しているな、と思いました。

 このアルバムは、その前作から垣間見えていた、そういった要素をより色濃く表したアルバムと言えましょう。もちろん、あえてジャンル区分をするのなら、やはりシューゲイザーとなるとは思いますが、その一方でザ・ホラーズにも決して引けを取らないような耽美的なサウンドに仕上がっています。確かに、前作の雰囲気からこう言ったサウンドになることは、少しながら予測はできたとは思いますが、自分のような多くのリスナーはやはり困惑してしまうのでは、と心配してしまうところでもあります。これはやはり耽美派の総本山とも言える4ADに移籍したこともたぶんに影響しているのでしょう。

 厚い雲がたれこめて、雷鳴が鳴り始め時のような不穏なこのアルバム幕開けを飾るインスト曲「Ayisha Abyss」。その嵐が去った後に、まだ降り止まぬ雨の中を駆け抜けて行くような「I Just Want To See Your Face」。やはりこの始まりの二曲の展開が、アルバム全体を表すカラーであり、自分達のスタンスを今一度示しているかのようです。中盤の「Melody For Jaana」や「Blow Yr Brains In The Morning Rain」の酩酊感は隣国、デンマークのザ・レヴォネッツもたじろぐほどで、「Honeyjinx」はソニック・ユースの「Shoot」を彷彿とさせます。

 書けば書くほど、カオスさが浮かび上がる今作。アルバム全体を通して聴くと、前作よりまとまった印象を受けますが、かといってリスナーに歩み寄った、聴きやすいサウンドかと言えば、そうではなく、あくまで今の自分達のスタンスを突きつける色合いが濃いように思います。今作の歪つなまでの酩酊した耽美さも良いですが、前作ではシューゲイザーやポスト・パンク的ながらポップ・ソングをところどころに散りばめていた彼らなだけに、次作は再びそう言ったサウンドも思い返してくれると嬉しいな、と感じたり。

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