ミュージック・ゴー・ミュージック『エクスプレッションズ』(Secretly Canadian / Mercury / Hostess)

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 困ったな。こりゃ傑作だ。もともと内輪ノリのパーティー・ミュージックとして作られたこの音楽を、傑作と言ってしまうのは少々ためらうのだけど、アバやカーペンターズを思わせるメロディにキュンときてしまうからしようがない。

 笑顔のようなやさしい音色。音でゆっくりマッサージされているような奏で。そこに美人女性ヴォーカリスト、ガラ・ベルの破綻のない歌声が乗っている。これが気持ちいい。カリフォルニアを拠点とする男2人女1人の3ピースバンド、ミュージック・ゴー・ミュージックのデビュー作『Expressions』を聴いていると、朗らで和やかで体がぽかぽかしてくるよ。この人懐っこさはメンバーいわく「自分達の本当に親しい友人達に聴かせるため」に作られた音楽だからこそ醸し出されるのかもしれないが、親しい友人じゃなくても、お、いいじゃん、という具合に、鼓膜をやさしく揺らしてくれる。ファッション誌で紹介されていてもおかしくないオシャレ感もある。

 こう書くと、「なんだよ、単なるスウィートなポップスかよ」と思われるかもしれないが、侮るなかれ。ただのポップスだと信じ込むこと、これは怖い。70年代を意識しているという彼らは、ファンクからハード・ロック、プログレッシヴ・ロックなど、数々の要素を難なく取り込んでいる。とはいえ、それ自体はめずらしくない。取り込み方が面白いのだ。センス良く、ぱっぱと洋服を着こなすようなステップの軽さでもって様々な音楽要素を我が物にし、さあどうですかという表情でファッション・ショウのモデルが歩いているみたいな、良い意味でスノビズムを楽しんでいるところがある。気取っているけどそれを上手く隠す術を持っているものだから、まったく、にくい。

 冷静な判断力に基づいた客観的な視点で様々なジャンルをサンプルと見立て、音楽の適材適所に配置するそのセンスはユーモアがあり、ポップ感に溢れ、DJ的なサンプリング能力に恐ろしいほど長けている。そんな確信犯じみたところは最近流行りのエレクトロ・ポップスや、サイケデリック・ポップスには無いもので実に新鮮なのである。ジャンルの融合ではなく、様々なジャンルの音を自分達の音楽に切り貼りする。そこに職人的な気質すら見えるのだ。

 手のひらにすっぽり収まって、持ち歩けそうな、とってもポップなポップ・ミュージックなのに、その実、計算された音楽性に背筋を正され、スピーカーと睨み合いながら聴いても面白い。何度聴いても飽きがこない。聴き手にリピート・ボタンを繰り返し押させてしまう本作は、夜を通り越して朝まで聴いてしまう。参ったな。やはり傑作だ。

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