SATORU ONO『Tales From Cross Valley』(Second Royal)

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 様々なイメージの断片が交錯しつつ、どうしようもなくポップ。京都出身だが現在は東京で活動している小野暁のサード・アルバムは、彼が経てきた様々な体験が理想的な形で結実した作品となった。

 ほぼ彼ひとりによる多重録音ファースト・アルバムにつづいて、ライヴ・バンドを率いてレコーディングされた2007年の前作は『The Days Of Perky Pat』と題されていた。フィリップ・K・ディックの短編から引用された言葉。「小説の内容との関係性を強く感じてつけたというより、言葉が想起させる非現実的な日常といったイメージに強く惹かれた部分が大きいと思います」と彼は語っていた。実際、表面的に「フィリップ・K・ディック的な音楽」というより、彼の世界の奥底にある「泣きたくなってしまうほどの暖かい人間性」に通じる部分があると感じた。

 そのときおこなわれたインタヴューで彼は、とくに影響を受けたソングライターとして、プリファブ・スプラウトのパディー・マクアルーンとXTCのアンディー・パートリッジを挙げていた。一方、テニスコーツの準メンバーとして、さらにはマヘル・シャラル・ハッシュ・バズへの参加歴でも知られていた。『The Days Of Perky Pat』にはセカンド・ロイヤルのレーベル・メイト、ルーファスやコレット、そして(BMXバンディッツの一員として来日した際に共演したことが縁となり)パールフィッシャーズのメンバーも参加していた。こういった様々な要素がようやくまとまりかけていたのが前作だったとすれば、今回の『Tales From Cross Valley』ではプロデューサーにデヴィッド・ノートンを迎えることで、その多面的な魅力が自然にまじりあい、過不足なく表現されている。

 スコットランドはグラスゴーで活動を開始、ロンドンをへて、現在は東京をベースに活動しているデヴィッド・ノートン(David Naughton)は、ティーンエイジ・ファンクラブ、ベル・アンド・セバスチャン、モハーヴィ・スリー(Mojave 3)、ライラック・タイムのスティーヴン&ニック・ダフィー、そして最近ではセカンド・ロイヤル期待のニュー・フェイス、ザ・ニュー・ハウスといった人たちと関わってきた。『Tales From Cross Valley』では彼自身がベースをはじめとする様々な楽器を手がけ、ニック・ダフィーやメトロ・オルガンなど彼ゆかりの人たちも参加している。京都のユニット、ナイト・テラー(Night Teller)をフィーチャーし、彼らがヴォーカルをとっている曲さえあるのだが(ソングライターでありヴォーカリストである個人名を冠したユニットとしては異例...)それさえ難なく溶けこんでいる。

 牧歌的とも都会的とも言いきれない、人なつっこいんだけど、不思議なひっかかりのある世界。楽しい、でもどこかに悲しみをたたえている。ちなみに彼はモンティ・パイソン/ニール・イネスの大ファンで、ラトルズのカヴァーをライヴでずっとやっていたらしい。ちょっとクセのあるヴォーカルも、なんとなくその系譜。オシャレというより、洒落ている。そこが好き。

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