クラッシュ・シティ・セインツ『グロウ・イン・ザ・ダーク・ミュージック』(Quince)

|
100519_rev_12_CrashCitySaints_rev.jpg
 ミシガン州のカラマズーを拠点に活動するクラッシュ・シティ・セインツは、ジョシュア・ガーマンとクリス・ワーハマキの2人のギタリストに、レコーディングやライヴ時のメンバーで、紅一点女性ヴォーカルであるエイプリル・モリス、マット・マッサッチ、ネイサン・ガーマン(ジョシュアの弟)の3人を加えた5人組。本作は、彼らが07年にリリースしたシングル「Returner」の全収録曲と、08年のファースト・アルバム『The People Were Even Stranger』からチョイスした8曲に、書き下ろしの新曲「Broke」を加えて新たにマスタリングし、クインス・レコードよりリリースされた世界デビュー作である。

 米国には初期リリーズを筆頭に、轟音番長スコット・コルツの1人ユニットであるアストロブライト、先日奇跡の来日を果たしたフリーティング・ジョイズ、もうすぐファースト・アルバム『COLOUR TRIP』をリリース予定のリンゴ・デススターなど、マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン(MBV)の影響をダイレクトに受け、それを何の衒いもなくアウトプットするバンドが数多く存在する。「僕らはケヴィン・シールズへのリスペクトを、一度たりとも忘れたことはない」と公言するクラッシュ・シティ・セインツも、その一つと言えるだろう。「『Isn't Anything』に対する返答」と自負する「Every Face Is A Mirror」をはじめ、『Loveless』移行期のケヴィンが書きそうな切ないメロが印象的な「Council Of Elders」、さらにはMBVの「Only Shallow」を思わせるリフと、コルム・オコーサク(MBVのドラマー)ばりの機関銃ドラムが効いた「Returner」など、「どんだけ好きやねん!」と思わず突っ込みたくなるような、ぶっちゃけて言えば"まんまMBV"な楽曲がズラリと並んでいる。それでも憎めないどころか、たまらなく愛しい気持ちになってしまうのは、先に挙げたバンドと同様、そこにはMBVへの"狂おしいほどの愛"が込められているからだろう。ちなみに本作の中で重要な要素となっているのが、紅一点エイプリル・モリスのヴォーカル。MBVのビリンダ・ブッチャーというよりは、カーヴのトニ・ハリディやコクトー・ツインズのエリザベス・フレイザーにも通じる耽美で妖艶な歌声が魅力だ。

 シングルやアルバム収録曲、書き下ろし曲の寄せ集めなので、アルバムとしてのトータル性が希薄なのは正直否めない。しかし、彼らのソングライティング能力の高さを知るにはマストな一枚と言えるだろう。今後が楽しみのバンドだ。

retweet