ザ・エックス・エックス

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THE XX

少ない方が多くを語れると信じているし
空間があることによってよりドラマ性が生まれる


傑作の呼び声高い1stアルバムのリリース後、待望の初来日を果たしたザ・エックス・エックス(The xx)。即ソールド・アウト(!)の来日公演2日前に、フロント・マンのオリヴァーにインタビューを敢行。フジロック・フェスティヴァルへの出演も発表され、ますます注目が高まる若き才能の秘密に迫った。

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日本に来てどこか行きましたか?

オリヴァー(以下O):ホテルが渋谷だから、その界隈をけっこう散策したよ。原宿にも行こうと思ってるよ。

原宿は洋服を買うにはいいところだと思いますよ。

O:実は今回ロンドンの友達も二人来ていて、もう一人日本に住んでいる友達もいるので、一緒にショッピングに行くのを楽しみにしてるよ。

今着てるmercの服は原宿にはあんまり置いてないと思いますけど。

O:(笑)OK。

1stアルバムが出てしばらく経ちましたが、特に印象の変化などありますか?

O:とにかく忙しくて、まだ客観的には考えられないよ。この一年で人生いくつ分もの経験をしたって思うほど、生活もがらっと変わったんだけど、その間にパフォーマーとしてすごく成長したという自負があるし、バンドとしてすごく前進したという手応えがある。もう少し経って振り返ったら、多分「すごかったんだな」っていう風に自分の中でも飲み込めると思うけど、今はそんな余裕もなく、ただひたすら忙しいんだよ。

以前、デモを作ってそれを再現する形で1stアルバムを制作したとおっしゃっていたのですが、次のアルバムに向けて新しいアイデアはツアーの中から生まれてきたりしていますか?

O:Ah......NO(笑)。Definitely no。ツアー中というのは残念ながらクリエイティブな生活じゃ決してないんだよ。やっぱりツアーが終わって一段落して腰を据えないと、なかなか次の作品に向けてということを考える余裕はないね。でも、この1年で多くの新しい音楽、新しい人と出会っているわけで、そういうところから影響を受けているのは確実だし、絶対に音楽も変化するだろうし、なによりもバンド、ミュージシャンとして確実に成長している。そういったものが反映される作品になると思う。

楽しみです。あなたたちのバック・グラウンドについてお伺いしたいのですが、今までどんなものを聴いてきたか、少し具体的に聞かせていただけますか? ココ・ロージーが好きだって言っていたので、聴いてみたのですが理解できなくて(笑)。

O:つい最近もココ・ロージーのライブを2回観たよ。本当に大好きなんだよ。聴くのが好きな音楽と影響を受けた音楽の線引きってすごく曖昧なもので、どんなものからも何らかの影響は受けているよね。コマーシャルなポップ・ミュージックもすごく好きで、実際レディ・ガガはパフォーマーとしてすごいと思うし、ビヨンセもそう。一方でUKのアンダーグラウンドな音楽、ジェイムス・ブレイクマウント・ケンビーなんかも本当にすごいなあって思う。

80年代初期の音楽の影響を色濃く感じるのに、名前がほとんど出てこないんですよね。

O:ヤング・マーブル・ジャイアンツとかもよく比較されるんだけど、でも正直言うと比較されて初めて知ったんだよね。僕は両親とすごく仲が良くて、情報交換なんかもよくするんだよ。両親は特別に音楽的才能があったりするような人じゃないんだけど、音楽はすごく好きだ。初めてフェスに連れて行ってもらったのも母だし。トーキング・ヘッズ、ザ・スミス、ドゥルッティ・コラム、なんかを教えてもらったよ。最近よく聴くようになったのはコクトー・ツインズだね。

それでも最近なんですね。

O:これも指摘されて初めて聴いたんだよ。なるほど比較されるのもわかるっていうくらい、彼らの音楽は好きだし、共感できる。

これは僕の感想なんですが、ザ・エックス・エックスの音楽は、すごく「視覚的な」音楽だと思うんですよね。

O:うん。

ハーモニーを厚くする方向に行かなかったのはどうしてですか? アルバム通じて、3声以上のコードってほとんど出てこないですよね。

O:意識してこういう風になったって言う訳じゃないんだよ。初期の頃に書いた「VCR」なんかは、楽器の演奏もままならない時に書いた曲なので、もっと演奏力があったらこういう曲はできなかったと思う。演奏力がない中で書いた曲だから、あれだけシンプルな曲ができたんだけど、でもこれがすごくいいって褒められた。僕らもこれでいいんだって言う手応えから、今は演奏力もついてきたけれど、むしろ抑制すること弾きすぎないことを意識するようになってきたんだよ。今では、少ない方が多くを語れると信じているし、空間があることによってよりドラマ性が生まれるという風に思っている。それに、僕もロミーも声は決して大きくないので、音を重ねて埋もれてしまうのでは唄を活かせないということをよくわかっているからね。

楽器を憶えるのにオリジナルを作ってたんですね。コピーはしなかったんですか?

O:もちろんやったよ。(ワム!の)「うきうきウェイク・ミー・アップ」とか、お遊びだけどね。今とは正反対だよ。音も歪んでいたし、自分のベースもロミーのギターも歪ませまくってた。今やってる静かで感情のこもった音楽を、最初から人前で出せなかったと思うよ。はじめはそこまで真剣に考えず、お互いに対して歌を唄い合ったりいうのをやって行く中で、すこしづつ自信をつけてきたんだ。

作曲について、もう少し詳しく聞かせてください。youtubeでアムステルダムでやったアコースティック・セットを見たんですが、ああいう形がミニマムな形なんですか? もっとマキシマムな形、バンドで集まってセッションしながら作っていくのかな、とも思っていたのですが。

O:あれはすごくいい例だと思う。もともとの骨組みの曲はベースとギターとボーカルでまず骨組みを作るんだけど、そこに行き着く前の段階で、僕とロミーがお互いに歌詞やフレーズを家で作ってくるんだ。それを照らし合わせて、コラージュして作っていく。お互いが書いているものがぴったりと一つに合わなくてもいいんだよ。ソニー・アンド・シェールみたいに唄ってる相手に愛を打ち明けてそれがかえってくるというような関係性ではなくて、それぞれが感じた経験、思いというものを書いて、それが並列するように合わせてるんだ。

二人が同時に唄っている歌詞が違ってたりしますよね。

O:うん。

最初聞いたとき、どちらかが歌詞を間違ってるのかと思いました(笑)。

O:(笑)そうやって、いったん骨組みができた段階で、それをジェイミーに渡すと、彼が曲に仕上げていくんだ。音楽的な部分での構成力であるとか、テクノロジーが彼の得意分野だからね。

「Fantasy」という曲で、次の曲のメロディが出てきたりするのが、すごくサイケデリックだと思いました。

O:「Fantasy」っていうのは、アルバムの中で唯一、アルバムのためにわざわざ書いたんだ。アルバム前半の明るめの曲からより暗めな曲に変化する間に入るインタールードだね。昼から夜に移り変わる時間をイメージしている。

今後の予定なんていうのは?

O:ひたすらツアー(笑)。9月、10月までは終わりはないよ。1年8ヶ月くらいツアーしてるっていうことになる。

あこがれの人に会ったりしましたか?

O:ココ・ロージー(笑)。先週会ったんだけど嬉しかったよ。フジロックにマッシヴ・アタックが出るよね? 彼らはすごく好きだったので会うのをすごく楽しみにしてるんだけど、あこがれの人って会わない方がいいっていうじゃない? がっかりされることもあるって。

会ったほうが良いと思いますよ(笑)。今日のインタビューは若い音楽をやるような人にすごく参考になったと思います。あなたと同世代の若いミュージシャンになにかアドヴァイスはありますか?

O:そうだね...、まあ、take your time(じっくり時間をかけてやるんだ)って感じ? 親が言いそうなことだけど(笑)。自分たちがすごくラッキーだったと思うのは、レーベルにすごく理解があったこと。デビュー・シングルを出した時から一気に世界中を回らされていたら、今とは違う状況になっていただろうし、とても自分たちの手には負えなかったと思う。2年間、じっくり時間をかけたからこそ、ここまで来れたんだよ。よく発見されてすぐ翌日に世の中に放り出されるようなバンドがいるけどね。自分たちが成長できたと手応えを感じられるところまで、時間をかけて焦らずにやった方が良いよ。


2010年6月
取材、文/田中智紀
通訳/伴野由里子


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photo by Kazumichi Kokei


そして彼らザ・エックス・エックスは、代官山ユニットのステージに立った。その模様については、こちらのレポもご参照ください!

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