ラヴ・イズ・オール『トゥー・サウザンド・アンド・テン・インジェリー』(Polyvinyl / Panorama Heltz)

|
reviews_100516_7_loveisall.jpg
 ラヴ・イズ・オールのポップの定義は明確だ。キャンキャン歌う女の子のヴォーカルが飛び跳ねる。とどのつまりはその一点。「もっとハイに! ポジティヴに!」と言わんばかりの歌声とギター、ベース、ドラムス、サックスのスピードに乗った演奏が突っ走る。一切ロウに入ることのないハイなテンション。夢にまで記憶が残る鮮烈なサウンド。もしこの音楽を辞書でひくなら出てくる単語はストレート。

 その姿勢はアロハやオーウェンなどで知られるレーベル、Polyvinylに移籍し、発表した3rdアルバムとなる本作『Two Thousand & Ten Injuries』(初国内盤化)でもぶれていない。デビュー当初はポスト・パンク・リヴァイヴァルと評され、2ndアルバムではガレージと評されたスウェーデン出身、男4人女1人の彼ら。ポスト・パンクやガレージの要素を残しつつ、エレクトロの要素を取り入れ、わずかにシューゲイザーも取り入れ、なおかつ凝ったサウンド・エフェクト、立体的なミックスが功を奏し、本作では、もはやムーヴメントに収まらないほど音楽性のふり幅は広がった。が、しかし、やはり真っ先に耳に飛び込んでくるのはキャンキャン、ポップな女の子ジョセフィーヌのヴォーカルだ。

 アート・ブレイキー並のドラミング、フリー・ジャズを思わせる歪んだサックス、すっとんきょうなギターが、ジョセフィーヌの歌声に絡みつき、整頓されないまま飛び出てくる。ぶっきらぼうだがそれがいい。愉快痛快とはまさにこのこと。あえて例えれば、ヤー・ヤー・ヤーズの1stアルバムをキュートにしたような作品だ。

 ラヴ・イズ・オールはトーキング・ヘッズにも、TVオン・ザ・レディオにもなれる素質を持っている。しかし彼らはそうならなかった。それはあくまでも自分たちのアイデンティティは、苦労も苦難も高らかに笑い飛ばしてしまうシンプルなポップ性だという自覚がはっきりしているからなのだ。ゆえに聴くたび真っすぐ耳に飛び込み、スカッとするしグッとくる。メロディをわずかに崩し、ちくりと刺す程度の毒っ気ある歌声を忍ばせているところもグッド。ネガティヴな物事のみではなく、ネガティヴ思考が渦巻く現代にあって、本作はネガティヴ思考をも実にチャーミングに蹴散らしてしまうのだ。そこにまた、スカッとする。

retweet