OLDE WORLDE『Anemone "Whirlwind"』 (Milestone Crowds)

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 10'sを牽引する可能性を秘めているオールディ・ワールディ(沼田壮平)によるファースト・フル・アルバム。邦楽の匂いが完全に剥落しており、けれどオルタナティヴの教科書をなぞっただけのような洋楽志向もない。日本人にとっての新たなパラダイムにもなり得るアルバムかもしれない。

 中性的な声と荒々しいギターと優しいメロディの共生。転じて涼やかなポップ・ソング。そして他の日本人アーティストと比べて、とにかく一聴した時の情報量が膨大だ。重厚なコーラスもアコギのじゃりっとした音も、それらは虚飾になることなく楽曲を彩色させており、どこから切っても世界基準に準拠した質感のそれである。

 日本のロックはといえば、左右に配置された二本のギターとドラムとベースとヴォーカルだけで楽曲が構成されており、良くも悪くも余計な音がない。それは既に日本独自の方法論と化しつつある。オールディ・ワールディは、その格式から逃れようとしている数少ないアーティストの一人と言えるだろう。アレンジの卓越さにしろ、情報量にしろ、両者の間には歴然とした差があると思うのだが、シンプルさを好む日本人に必ずしも享受されるわけではないようだ。勿論、音楽が情報量の多さや派手さを基盤としたものでないことは認知しているつもりだが。

 この新作も前作と同様に、ロック、ポップ、フォーク、ヒップホップと無造作に楽曲が揃っており、彼の多様な側面を覗かせる。統一感がないといえばそれまでだが、それは溢れて止まらない個性の洪水を汲み取るには、ロックやポップという一つの器だけでは足りないからである。事実、ビルト・トゥ・スピルを彷彿させるような13曲目を聴き終わった後に得られるカタルシスは凄まじい。

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