デロレアン『スビーザ』(Matador / Hostess)

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 まさか、これほどまでの完成度だとは!

 デロレアンは2000年代初頭から活動を開始した、スベインはバスク地方の4ピースだ。これまでに『Delorean』(2004年)と『Into The Plateau』(2007年)という2枚のアルバムをリリースしているが、その内容は当時の80'sリヴァイヴァルのシンセ・ポップ・バンドが雨後の筍のように現れた中において、決して突出した内容とはいえなかった。

 しかし、昨年リリースされた3曲(とボーナス・トラック)入りの「Ayrton Senna」EPで彼らはまるで別バンドになったかのように大きく変わった。90年代のハウスやテクノとニュー・オーダー風のシンセ・ポップを下敷きに、ファンキーなベースやストーン・ローゼスを思わせるようなギター、女性コーラスなどを組み合わせた楽曲。それは完璧なダンス・ミュージックだった。その幾重にも層を成す音のレイヤーの重ねぶりは、カット・コピーの『In Ghost Colors』を思わせる充実ぶりなのだから。しかも、このころからザ・ビッグ・ピンクやレモネードなどの楽曲をリミックスし発表、その完成度の高さも追い風になり、徐々にネットメディアやブログを通じて彼らの名前が広まっていった。

 そして、ついに届けられた3枚目のアルバムが『Subiza』だ。昨年の夏にレコーディングされたこのアルバムはもちろん、「Ayrton Senna」EPの延長上といえる音楽性。だが、そのレイヤーの数と複雑さは更に増している。例えるなら、アニマル・コレクティヴの『Merriweather Post Pavillion』。だが、アニコレが密室的でサイケデリックなのに対し、デロレアンは開放的でエキゾチック、まるで地中海の海辺の風景をそっくりそのまま切り取ったかのようで、ただただ美しい。

 ダブステップのビートを配した「Stay Close」でアルバムは幕を開け、続いてオールドスクール・ヒップ・ホップ風の「Real Love」、レイヴの高揚感をたたえた「Infinite Desert」など、トラックごとにビートやサウンドは様々な表情をみせる。だが、シンセやギター、キーボードに加え、ハンドクラップやサンプリングされた子供の声などのマテリアルを配したサウンドは一貫してイノセントでポップだし、シンガーのエクヒ・ロペテギ(Ekhi Lopetegi)の澄んだ歌声がとても心地よい。そう、バリアレック・リヴァイヴァルやインディー・ダンス...といったカテゴリーの枠には決して収まらない、広大なスケールのダンス・ミュージックが『Subiza』には広がっている。

 もうすぐ夏が来る。だが、こんなに心躍る夏のサウンド・トラックを手に出来た今年の僕たちはとてもラッキーだ。

編集部より:日本盤は6月23日(水)リリース予定。

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