LCDサウンドシステム『ディス・イズ・ハプニング』(DFA / EMI)

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 本当に終わりなのか!?

 LCDサウンドシステムとしては最後の作品になるとアナウンスされているこの『This Is Happening』を聴いて以来、僕の頭からその疑問が消えない。それくらい、素晴らしいアルバムだからだ。

 ディーヴォ風のコミカルでポップなサウンドから、コーラスでは天駆けるようなキーボードがインする「Drunk Girls」は「North American Scam」に負けずとも劣らない充実したシングルだ。他にも、タイトなコンガとイーノの実験性がぶつかりヒートアップする「Pow Pow」、ファンキーなベース・ラインにのせてアイロニカルにヒットについて歌う「You Wanted A Hit」など、ミニマルなビートのループで構成された9曲にはグルーヴ感が息づく。間違いなく、これらの曲はフロアで人々を踊らせることになるだろう。

 そして、印象的なのはジェイムスのヴォーカルだ。メロウに歌い上げる「Dance Yrself Clean」や、ハイテンションでまくしたてる「Drunk Girls」、ボウイばりにセクシーに歌い上げる「I Can Change」など、広いレンジの表現力をみせる。現在40歳にしてのこのパワーに驚かされるばかりだ。だからこそ、この作品は「通過点」に過ぎないのではないか、と思えてしょうがない。

 そもそも、21世紀最初のディケイドは、ジェイムス・マーフィーの功績の上に成り立っている。DFAとしてザ・ラプチャーやレディオ4、最近ではロックンロール・リヴァイヴァリストのフリー・エナジーを輩出した。DJやプロデューサーとしての活躍もある。そして、2002年にLCDサウンドシステムとしてシングル「Losing My Edge」でのデビュー以来、2004年の『LCD Soundsystem』、2008年の『Sound Of Silver』など作品は高く評価され、ダンス・ミュージックのドップ・クリエイターとして君臨し続けた。今ではありふれたものになった、ディスコ・パンクやダンス・ロックもLCD抜きに語ることなんか出来ないじゃないか。

『This Is Happening』はLCDがオリジネイターとしてまだまだ革新的であることを十二分に示す作品だし、本誌のインタビューにおいてジェイムスはLCDとしての活動を終えることに感傷的な表情を一切表していない。これからフジを含むワールド・ツアーに出て精力的にライヴを行う予定なわけだが、ツアーが終わる一年半後が早くも気になる。初めて自分自身の写真を使用したジャケットでの前のめりのファイティング・ポーズに、期待が募るばかりだ。まだまだ彼にはダンス・ミュージックを牽引していける力があるのだから。

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