カイト『デッド・ウェイヴス』(Kids / Rallye)

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 シューゲイザー? レイヴ? それともシュー・レイヴ?

 日本でのみセカンド・アルバムとして発表された前作『Science For The Living』のイギリス版というコンセプトの下に制作が開始され、新曲も加えたこのアルバム『Dead Waves』を聴くと、上記の形容のどれもが彼らカイト(Kyte)のサウンドを捉えきれていないことが、すぐに分かるでしょう。今作は本国では彼ら初のフル・アルバムとしての、デビュー盤となっています。

 まず一聴しただけで、今までのどの作品よりも電子音を大々的に取り入れていることに驚かされます。いや、前作のタイトルが『Science For The Living』だったり、今作にも収録されている「The Smoke Saved Lives」や「Designed For Damage」といった曲のタイトルを見ただけで、文系・文科系の数のほうが多いだろうインディ・シーンにおいて、明らかに理系っぽい異質な雰囲気を漂わせていた彼ら。今作は、その理系的スタンスが見事に活きたエレクトロニックなサウンドの攻めのデビュー作と言えましょう。

 前作では序盤の流れのなか、ゆるやかな印象すらあった「The Smoke Saved Lives」。今作では再録され、力強いボーカルと、より動と静が強調したサウンドを手に入れて、アルバムの幕開けを飾ります。続いて今作を象徴するような、新曲「Ihnfsa」の吸い寄せられるような吸引力をもったイントロを聴いただけで、気がつけばリスナーは既にカイトの世界に引き込まれています。アルバム全体に過去に発表した曲の新録を散りばめながらも、明らかにそれらを上回りながら、新曲でもその世界観を余すところ無く見せつける本作。シューゲイザーやレイヴは感じさせるものの、そのどれもが、限定的な範囲にとらわれず、しなやかに鳴らされています。旧来のファンも取りこぼすことなく、新たなフィールドを開拓していく彼らの積極的な姿勢が強く表れているでしょう。

 ところで、日本での単独公演は軒並みソールド・アウト、去年のサマー・ソニックでの来日でも力強いパフォーマンスを繰り広げてくれた彼らですが、まだまだ本国では、そのUKシーンでは異質なサウンドからなのか目覚しいほどの人気は確立していないようです。前作をふまえたデビュー・フル・アルバムとなる今作が、本国ではどう受け入れられるのでしょうか。気になってしまう作品です。

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