世界の終わり『Earth』(Lastrum)

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「貴方が殺した自由の歌が僕の頭に響く」
「貴方が殺した自由の歌は貴方の心に響いていますか?」
「貴方が殺した命の歌が僕の頭に響く」
 
 これらは「虹色の戦争」の歌詞の一部分で初めて聞いた時からこの歌詞の部分のインパクトがすごくて頭の中で巡る、巡る、めぐる、廻る、メグル、巡って脳内リフレインした。

「貴方が殺した自由の歌が僕の頭に響く」「貴方が殺した自由の歌は貴方の心に響いていますか?」「貴方が殺した命の歌が僕の頭に響く」って巡る。

「世界の終わり」の『EARTH』のアルバムのジャケットはバンド名「世界の終わり」をローマ字表記したもので「SEKAI NO OWARI」とある。

SEKAI
NO
OWARI

 で「NO WAR」って部分が虹色でデザインされていて、それがメッセージだったと気付いたのは買ってしばらくしてだった。すごいネーミング。

「世界の終わり」のイメージって最終戦争とか、大事な人が奪われたりいなくなったりこの世界が崩壊して彩りを失うことを意味するのに、ローマ字にして虹色で「NO WAR」が隠されている。この精神は何だろうかと僕は思った。それによりさらに彼らに興味を持った。何度も繰り返してアルバムを聴いた。

 世界を終わらさないための「NO WAR」であるのが本当の意味での彼らのバンド名なのか、意図的なダブルネーミングか。だとするとこのバンドはかなりひねくれててアイロニーもたっぷりだ。期待値が上がってくる、どこまで行くのか。

 どこまで本気で世界を変えようとしているのか、戦おうとしているのか、ポップなメロディにそれに反するような歌詞や言葉がそれらに乗って聞き手の中で巡り、その意味を考えてしまう。

 ツイン・ギターにピアノにDJという四人編成でそのDJはピエロのお面を被っている。しかも名前は「LOVE」で二代目だそうだ。メンバーのインタヴューを読むとヴォーカル・ギターの深瀬慧は中学もほとんど行かず、その後に二年間アメリカに留学するつもりが二週間でパニックになり、その後精神病院に入り退院し音楽を始めている。

 その後、プロ・ミュージシャンになるよりもライブハウスを作るよう方が簡単だとバンド結成よりも前にライブハウスを作り活動を始めた。そこに集まったメンバーが今の四人であり、深瀬の学歴もなく、将来に対しての不安や夢も希望もない状態、そして「死にたくない」というもの、それらの危機的な絶望的な状態からの「生きる」という理由を探し、もう一度歩き出すために考えに考えた末の決断がライブハウスを作りバンドを始めることだった。

 ライブハウス「EARTH」にはスタッフが15人いるらしい。彼らはひとつのコミュニティである。「世界の終わり」というクリエイティブカンパニーでもある。

 同じ意志を持ったコミュニティとして世界と向き合おうとしているような感じがする。この感覚はとても正しいのでないかと思う。グローバリゼーションが破壊したある意味での経済活動やインタネーットの普及で変わってしまったクリエイティブの表現の中で僕ら個人は戦うものが多すぎるし、孤独だ。

 その孤独を武器に世界に自らを表明する創造的表現をしていくのか、あるいは集団としてカンパニーという仲間と共に世界に向かい合うかという選択ぐらいしかないのかもしれない。

 大きなレコード会社だとかを抜いてしまい、自分たちのカンパニーで今までだったらレコード会社がしていたことを自らの手でやり、活動していくというのが「テン年代」(by 佐々木敦)のスタンダードな音楽活動になるのかもしれない。

 それがスタンダードになるのなら彼らの鳴らす豊潤な音楽と刹那的にも思える歌詞の相互作用により多くの支持を得ていくバンドになるだろう。このアルバム『EARTH』はその「世界の始まり」になるはずだ。極めて「テン年代」的な、このディケイドを代表するバンドになる可能性が高いと思う。彼らがこの先どう展開していくのかが楽しみだ。

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