ブロークン・ベルズ『ブロークン・ベルズ』(Columbia / Sony Music)

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 宇宙? 夜空? それとも誰かの心の闇? ピンクのトゲトゲの球体が宙に浮いている。よく見ると小さな窓が開いていて、中から光がこぼれている。ザ・シンズのジェームス・マーサーとデンジャー・マウスのユニット、ブロークン・ベルズの初めてのアルバムは、そんなジャケットが象徴するように浮遊感あふれる美しい歌がたくさん詰まっている。

 このアルバムを入手してからすぐ、 YouTubeでライブの映像を見た。僕はデンジャー・マウスが動いている姿を初めて見て、とてもビックリした。ドラムを叩いてる! 考えてみれば当たり前のことかも知れない。いくつもの名作アルバムでトラック・メーカーを努めてきたんだもの。ドラムが叩けて当然でしょう。でも、やっぱり僕には新鮮だった。ジェームス・マーサーとデンジャー・マウスにとって、ブロークン・ベルズは「コラボ」や「ユニット」というお互いの線引きをはっきりさせた関係性ではなく、ひとつのバンドなんだという印象を持った。2人の音楽性を有機的に絡め合わせること。だから、こんなにも親密でソフトな歌がいくつも生まれたんだと思う。ナールズ・バークレイやゴリラズの『Demon Days』、ベックの『Modern Guilt』のような斬新なビートのアプローチは控えめ。ジェームス・マーサーが紡ぐ極上のメロディに寄り添うようなサウンド・アレンジが心地良い。

 ロックの歴史は数多くの優れたメロディ・メーカーによって作られてきた。その歴史はこれからも変わらずに続くだろう。そして、いつの時代も耳を傾けさえすれば、素敵な歌が聞こえてくるはずだ。数年前、ヒップ・ホップからやって来たデンジャー・マウスは、「ジャンルなんて関係ねーよ」と僕たちに教えてくれた。ロックだろうとヒップ・ホップだろうと、そこにある言葉とビートが基本。白も黒も混ぜてみろと。そこから、ほんのちょっと歴史は動いたのかもしれない。

 もうみんなが知っている。デンジャー・マウスは美しいメロディをもっとキラキラさせる魔法を持っている。ちょうど、ピンクのトゲトゲの球体からこぼれる光のように。

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