ザ・ホワイト・ストライプス『アンダー・グレイト・ホワイト・ノーザン・ライツ』CD+DVD(Warner)

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 先日、友人のバンドのライブを見に行った。「ホワイト・ストライプスと同じステージに立ったよ」。汗を拭いながら冗談っぽくそんなことを言う彼の後ろには、薄暗い小さなステージが見えた。新宿URGA。ジャックとメグが日本で初めてライブをしたステージは、僕たちにこんなにも近かったんだ。もちろん、僕はその瞬間には立ち会っていない。でも、そのステージに上がる2人の姿が一瞬、見えたような気がした。そこには何ひとつ違和感がなかった。

 2007年の『Icky Thump』発表とその後のツアー以来、活動を停止しているホワイト・ストライプス。みんなが知っているとおり、ジャックはラカンターズやデッド・ウェザーとしてサイド・プロジェクトとは言えないほどの名作アルバムを作り上げ、ライブ活動も休みなく続けている。メグの不在がこんなにも長く続くとは思っていなかった。間もなく発売されるデッド・ウェザーのアルバムはもちろん楽しみだけど、ホワイト・ストライプスの活動再開がいちばんうれしい知らせになるんだろうな。ホワイト・ストライプスにとって初めてのライブ・アルバムとなる『Under Great White Northern Lights』を聞いて、僕はそう思った。そしてドキュメンタリーに描かれているジャックとメグの姿に涙がこぼれた。

 このライブ・アルバムとドキュメンタリーには、結成10周年を記念した2007年のカナダ・ツアーの様子が克明に刻みこまれている。ジャックとメグの間合いだけで成り立つスリリングで圧倒的な熱量の演奏。時に暴走するかに思えるジャックの演奏にも、メグはプリミティヴなビートでしっかり応えている。崩れ落ちる寸前、爆音の中で確かめ合う2人の眼差し。そして2人だけのブルースは成立している。

 ドキュメンタリーでは、ジャックとメグの「眼差し」そのものと言える関係が描き出されている。小さな町でのシークレット・ギグ、何気ない会話を交わす2人のオフ・ショット、旅先での様々な出会いなどから、ホワイト・ストライプスが音楽に立ち向かう姿が明確になる。もはや姉弟というギミック、恋愛という関係性すら超越してしまったブルースが結びつけた運命。それは呪縛かもしれない。だからこそ2人が離ればなれにならないためには、お互いの存在を確認する「眼差し」が大切なんだということ。

 ジャック・ホワイトがロックの歴史に永遠に名を残すことは、間違いない。そのジャックの才能に見出され、圧倒されながらも、音楽そのものに「選ばれてしまった」とも言えるメグの姿が愛おしく、切ない。やっぱりメグがいないとホワイト・ストライプスじゃないから。お互いの運命に寄り添うような2人だけのラスト・シーンがとても美しい。

 日本の小さなライブ・ハウスで、まだそれほど有名じゃないホワイト・ストライプスのギグが始まる。自信満々のジャックに手を引かれて、ステージに上がるメグ。そして、視線を交わしながらブルースを鳴らし始めた2人。いつかきっと、そんな感じで戻って来てくれるはず。もう一度、ホワイト・ストライプスの音楽が鳴り響く日を待っている。

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