BOBBY AND BLUMM『A Little Big』(Sound Of A Handshake)

|
reviews_100516_4_BobbyAndBlumm.jpg
 2009年にリリースされたアルバムも素晴らしかった、イッツ・ア・ミュージカル(It's A Musical)や、ボビー・ベイビー(Bobby Baby)名義でも活動しているスウェーデン人女性ヴォーカリストエリノア・ブリクシ(Ellinor Blixt)と、いわゆるエレクトロニカ・アーティスト、F.S.ブルム(Blumm)というドイツ人ベテラン・ギタリストによるデュオ、ボビー・アンド・ブルム名義まさかの2作目。続編が出るとは思わなかった。

 良質なインディー・ポップを量産しているMorr Musicの諸作の中でも異色といえるほど、リラックスしたムードに溢れた良盤だ。決して生演奏だけにこだわった作品ではないのだけど、部分的には室内楽と言ってもいいような、落ち着いたエレガントな雰囲気にあふれている。

 F.S.ブルムのエレクトロニカ系のプロダクションは、リバース再生などが所々にちりばめられているがかなり抑えめな印象だ。フェンダー系のギターの音もノン・エフェクトじゃないかというほど生々しいクリーン・トーンで録られている。

 エリノアのヴォーカルのかすんだ質感もすごく良い。イッツ・ア・ミュージカルの時の様な張った唄い方も良いのだけど、このアルバムでの深呼吸の様なリラックスした唄い方の方が彼女の本来の持ち味だと思う。

 流す程度に聴いていたら、「Seascape」の最後、ベースの余韻がフェード・アウトせずに、10秒以上しっかり収められているのを、じーっと聴いてしまった。一度に鳴っている音数も少ないので、ひとつひとつの音に自然と意識が向くのだろう。「Take A Sip(NO.2)」後半の、16分音符5個取りのシーケンス・パターンも、ポリリズムを強調するでもなく、音量抑えめでそれだけが際立たないよう注意深くに配置されている。エレクトロニカ的と思える箇所はほとんどなく、アルバム通じてライヴ・バンドのようなナチュラルさだ。全編通じてチェレスタの音がすごくきれいに録られているのが印象的なのだが、これって本物なんだろうか。実物を見たことがないんだけど。

 このアルバムを入手したのは、4月半ば、異様に雨の多い春だったのだけど、ある日、部屋で鳴るこのアルバムをBGMにベランダに出てぼんやり三軒茶屋の景色を眺め、この曇った空のちょっとけだるい感じと相まった、ナチュラルでリラックスした雰囲気に浸っていた。しばらくすると、iTunesが別のアルバムを再生し我に返った。以来、何人かの友人に聴かせたところ、晴れてる日に緑道を散歩するときにこういうのを聴きたいだの、自転車に乗ってちょっと遠出してみたくなるだの、喫茶店で死ぬほど聴いたボサノバなんかがかかるよりこういうのがかかると良いのに、などという感想を僕にはずかしげもなく語ってみせた。なんか木漏れ日っぽい音楽だよね、と言った人もいた。いい歳こいた人間を、こういう感情に駆り立てるのだとしたら、これほど危険な音楽はない。

retweet