2メニーDJs

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2 MANY DJS

みんなに共通しているのは
ただ音楽フリークだってこと


2010年代の幕開けに、2メニーDJsが日本にやってきた! とても象徴的な出来事だと思った。ヨーロッパでは2002年にリリースされ、いわゆる「マッシュアップ」的な手法の先駆けと評されている彼らの『As Heard On Radio Soulwax Pt.2』は、ある意味、現在の音楽状況を予言していたアルバムであるとともに、そのパワーは今も未来に対する希望を感じさせる。1月後半の週末、Zepp Tokyoでおこなわれたイベントに出演すべく、深夜24時すぎに到着した彼ら(そう、パート・オブ・ザ・ウィークエンド・ネヴァー・ダイズ!) に楽屋で聞いた。

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今は2010年代になったところ、ですよね。いろんな人が過去10年のベスト・アルバムを挙げたりしてると思うんですが、僕個人にとっては、2メニーDJsのアルバム『As Heard On Radio Soulwax Pt.2』がこの10年のベストでした。

デイヴィッド・ディワーラ(以下D):本当に?

ステファン・ディワーラ(以下S):ありがとう!

ソウルワックスのアルバムじゃないってところが失礼かな、とも思ったんですが...。

S:僕らにとってみたらどっちでも関係ないことだよ。僕らは2メニーDJsだし、ソウルワックスでもある。自分たちにとっても変な感じはするんだよね。自分たちがやっていることで、成功するとは思ってなかったからさ。世界を旅して周って、たくさんの人たちのためにプレイして、音楽を作って、スーツを買えるような生活って、すばらしいけどおまけみたいなものって言うか(笑)。誰かが僕らのところに来て、僕らの音楽が好きだとか、影響を受けたって言ってくれるようなことって、自分じゃ信じられないんだよ。ただ、自分たちが好きなことをやってただけなのにね。でも、誰かが自分たちに憧れているとか、そういうことを意識したりしはじめると、自分たちがやっている音楽にもそれが影響してくるように思う。僕らは今でも、ただ音楽ファンなだけなんだよ。だから、僕らや君たち、(クッキーシーン69号の表紙を指して)コーネリアスやユキヒロ・タカハシ(ちなみに、ステファンはYMOの大ファン)、それに(クッキーシーン77号の表紙を指して)ダス・ポップ(ちなみに、ディワーラ兄弟は彼らのアルバムをプロデュースしている)...。みんなに共通しているのは、ただ音楽フリークだってこと。今日も16時くらいに日本に来て、最初にしたのはレコファンに行って買い物することだった(笑)。最初にするのはレコードを買うこと(笑)。僕らは今でも、夢のなかに生きてるんだ。

D:面白いと思うのは、あのアルバムがもし君にとって本当にこの10年のベスト・アルバムだったとしたら、ただ1人の音楽だったってことじゃなく、60人くらいの人たちの音楽が、1枚にまとめられていたものだったってこと。

そう! それが、まとまって「あなたたちの作品」になっているというところが、まず素晴らしくて...。

D:20年前だったら、考えられなかった。あのアルバムは僕らにとって、1回作ってリリースして...半年後ぐらいには、完全にアルバムが独り歩きするようになっていた作品だった。もう自分たちだけのものじゃなかったっていうか。

S:そう、あのアルバムが出たあと、ニューヨーク・タイムズのカヴァーになったりして、いかに新しいかってことが論じられたりするようになったのを見て、ああ、もう、自分たちの手から離れたんだな、って感じた。

D:アルバムがアルバムだけで生きるようになった。自分たちでも予想してなかったことだけど、すごく長い間売れ続けるレコードになったんだ。ちょっとずつセールスを伸ばしながら、リリースされてから何年たっても売れていた。今はもっとそういう傾向が強まってるけど、音楽って本当に流行だけのファッションみたいなものになってる。2カ月でもう終わり、音楽としては死んだも同じ、みたいな。すごく皮肉なことだと思うけど。あのアルバムは逆に、半年経ってから生き始めた。みんなが2メニーDJsのアルバムの話をするとき、僕らとしては一歩下がって遠くから眺めるようにしている。もう、僕らだけのものじゃないって思いながらね。あれは、正しいタイミングで世に出た、正しいアルバムだったんだ。

あれ以降「マッシュアップ」と呼ばれるテクニックが広がりましたが、逆にあれはそんな範疇を超えていたというか、そういったスタイル自体が重要なわけじゃないというか...。

S:僕ら自身は、自分たちがマッシュアップに属していたとは思ってないんだ。みんな僕らがやろうとしていたアイディアを誤解してたと思う。たとえばヴォーカルをどこかの曲から抜いて、他の音楽の上に乗せるようなことを、スポーツみたいにやってるって...。今ではそういうことも簡単になった。それで音楽は関係なく、どれだけ沢山のものを詰め込めるかって競技みたいになってさ。でも僕らにとっては、いつだって音楽が先にあるものだった。自分たちが好きな曲が2曲あって、それがすごくうまく組み合わさったら、ラッキーみたいな。それまで考えつかなかったような2曲が合わさって、別のいい曲が生まれるってことがゴールで、テクニックの問題じゃなかったんだ。あのアルバムにはヴィタリックも入ってるけど、デスティニーズ・チャイルドも入っている。

D:レジデンツ(The Residents)とか。

S:うん。ピーチス(Peaches)なんかも。だから、エレクトロニックだけど、ファック・ユーっていうメンタリティーを持ってる。マッシュアップという方法自体は僕らがやってたことのひとつの側面にすぎなかったんだ。

そのファック・ユー・メンタリティーに激しく惹かれたんだと思います。ファック・ユー的でパンクなアティテュードというか(笑)。でも普通、パンクスはELP(エマーソン・レイク&パーマー)は嫌いますよね。

S&D:(笑)

あのアルバムの1曲目で、彼らの曲とベースメント・ジャックスが混ざってるのに激しい衝撃を受けて。さっき名前のあがったデスティニーズ・チャイルドもそうですけど、なんというか音楽にまつわるイメージとか偏見とかを全部とっぱらって、音楽そのものの楽しさだけが抽出されているような...。で、ソウルワックスというバンドもやってるのに、よくこんなレコードを作ったもんだと...。

S:僕らは何度もひどいキャリアの選択をしてきているからね。ついさっき(同時期に来日していた)ディプロとも話してたんだ。ソウルワックスを始めたときって、レコードへのアドヴァイスも何もないままにUKで半年間のツアーを回りだした。本当に小さなヴェニューをたくさん回ったよ。そこで演奏し続けていたんだけど、よくいっしょになったのが、コールドプレイとミューズだった。そう言ったらディプロが、「ありえないよ!」って(笑)。それから次第に気に入ってくれる人が増え始めて、アメリカで契約する話も上がった。そんなとき、2メニーDJsを始めたんだよね。誰もが、「何やってんだよ、ソウルワックスを今やらなかったらどうすんだよ? キャリアが台無しだぞ!」みたいなことを言ってたけど、結局2メニーDJsをやったらそれがブレイクした。そうしたら今度は、「もうソウルワックスは止めて、2メニーDJsに専念するんだ!」ってみんな言ってた。そこでソウルワックスを再開したんだよ(笑)。僕らがやってきたことっていうのはずっと...わかんないけど...例えば次はレゲエのレコードを作るとか(笑)...そんなことが起こっても、僕は驚かないね。何があっても、人のアドヴァイスとは反対のことをずっとしてきた。自分たち自身が本当に好きだと思えて、エキサイトできる、それだけで理由は充分なんだよ。それが他人に影響を与えるんだと思う。みんな気に入ってくれるっていうか。今は新しいラジオ局の企画を考えているんだよ。2メニーDJsで。何か新しいことをやりたいって思ったんだけど、もうミックスCDはやりたくなかった。あまりにそういうのが増えたからね。

今のところ、あなたたちの公式な最新作といえば、DVD『Part Of The Weekend Never Dies』って感じですかね?

S:あれなんかもさ、今は本当にどこに行っても...シンガポールやクアラルンプールみたいな東南アジアの国に行っても...キッズがみんな、あのDVDは最高だった、今まで見たDVDの中でも一番よかったって言ってくれる。でも僕らから見たら、もう、ずっと昔に終わってしまったこと。台北でもそう言われたな...。おかしいよね。僕らが最初にすごくエキサイトして始めたころは、誰もが「何やってんだ」って顔して眺めているんだけど、しばらく経つと「これはいい」って言いはじめる。でもそのころにはもう、僕らの興味は他に移ってしまっているんだ(笑)。いつだってそうだよ。

パイオニアですね。

S:ビジネスとしてはダメだけどね(笑)。どこのレコード会社も、僕らと仕事するのは躊躇する(笑)。

レコード会社と言えば、ちょっと微妙な質問かもしれませんけど、最近の黄色いレコード(『Most Of The Other Mixes』というタイトルのリミックス集。MGMTやLCDサウンドシステムといった人たちはともなく、デビッド・ボウイ、プリンス、ローリング・ストーンズまで入ってる...)、はまともに出したら絶対出せないんじゃないかと...。半分ブートみたいな形で出てて、買ったんですが...。

D:君が買ったのは、たぶん...30枚...35枚ぐらい...いや、もっとかもしれないけど、その中の1枚だとは思う。日本でしか見たことないけどね。僕らは全然タッチしてないよ。

S:誰かが金もうけのために作ったんだ。それで金もうけしてるなら、ちょっと悔しくはあるけどね。でも、すごく難しい部分はある。公平な立場から言えば、僕らも他の誰かの曲をプレイしているわけで、それで誰かが金もうけをしていることに、どうして僕らが怒れるのかっていう...。

そういうアティテュードこそ、今の音楽業界には求められているような気がするんですが...(笑)。

S:そうだね。そういうアティテュードと、今の音楽業界は向かい合わなきゃいけない。今そういうことが起こってるんだ。シンガポールに行っても、台北でも、クアラルンプールでも、キッズたちはみんな僕らの曲を全部知ってる。無料でダウンロードしてきてね。でも、気持ちはわかるんだ。僕が若かったら、そんなことにお金なんか払いたくないよ。今、すごく大きな革命が起こってる。起こってるっていうか、そういう旗が立ってるのを見てるっていうか。

それぞれの世代に旗みたいなものがあるんだと思います。

S:その通りだね。またそれも変わるんだろう。アップルのタブレット(iPad)とか見てて、インターネットも将来的にすごくお金を払わなきゃ使えないシステムになったりするんじゃないかって思った。僕らの子供たちが「え、パパたちのころはネットって無料だったの? クレイジーだよ!」っていうようなさ(笑)。

D:それは起こらないよ...(笑)!

S:デイヴが正しいといいね。僕が間違ってた方がいい(笑)。

今のコンビネーション、すごくよかったです(笑)。

D:今、もう、手遅れだって僕は思うんだよ。キッズたちはもう全然音楽にお金を払わないでいいって世代で育っている。でも、まだ、たとえばヴァンパイア・ウィークエンドのファンたちみたいに、バンドをサポートしてレコードをナンバー・ワンにしたいってファンもいるんだ。そういう人たちは今でも存在はしてるんだよ。ギグをすればちゃんとヴェニューもいっぱいになるし。お金を払ってサポートしたいってキッズが。そういう価値があるかどうかっていうのが、音楽業界にも求められてるんじゃないかな。

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 インタヴューの途中で出てきた言葉を借りれば、現在の音楽状況に新しい世代が立てている旗を、最初に作ったのが『As Heard On Radio Soulwax Pt.2』だったとぼくは思う。もちろんちゃんとライセンス使用料を払いつつ(レコード会社も、死ぬほど大変だったろう...)「音楽は誰のものでもない」というアナーキズム...ポピュラー音楽がビジネスとなる以前の原始的テーゼがはりついているように感じられた。そして、そこに見られる「(思想に裏打ちされた)楽しさ」を、彼らは今もアップデートしつづけている。

 このインタヴューの数時間後、超満員のフロアに彼らがぶちかましたDJプレイは、まさにその証左だった。ときにはモンティ・パイソンの域にまで達していると感じられる映像が常にバックに流れていた。彼らはそこで、プレイしている曲のジャケットを堂々と示している。だから「あっ、オレ、この曲わかる、そんなオレ、クール」みたいな図式をけちらすかのように。そんな意味で、彼らがせっかくピンク・レディーをかけてくれたのに、フロアの盛りあがりがイマイチだったのが残念といえば残念だった。「これで盛りあがっていいのか?」みたいな、微妙な戸惑いがフロアに感じられたというか(笑)。

 他人の目...誰かの評価なんか気にするな。ファック・ユー・メンタリティーで楽しもう!


2010年1月
取材、文/伊藤英嗣
翻訳/中谷ななみ

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